エステサロン経営者が知っておくべき借入・融資方法

エステサロン経営者が知っておくべき借入・融資方法

 

エステサロン経営の中で事業を維持、継続、拡大するにはこれらの資金は欠かせません。エステサロン経営する中で知るべき借入や融資方法について説明します。

 

エステサロン経営者が知るべき借入・融資方法とは

 

まず、「借入」と「融資」は異なります。「借入」はあくまで個人が生活費や住宅取得等のために金融機関で借入れることを言います。
一方、「融資」は、事業運営に必要な資金を金融機関から借りることをいいます。ここでは融資についてお話をします。

「融資」は、事業計画に基づく明確な資金の使途や返済計画が提示できて初めて借入ができます。金利は返済見込みが確実な相手にしか融資しませんから個人の借入に対して低利ですが、審査があり借入をするまでに時間はかかります。

融資には、「公的融資」と「民間融資」とあります。「公的融資」では日本政策金融公庫や自治体の制度融資があります。審査は厳しく時間はかかりますが、金利は1-2%と低く、保証人が不要なものもあります。

一方、「民間融資」は、銀行や信用組合では、審査は優しく短時間で融資が受けられますが、金利が2-9%程度と高く、保証人になる必要があります。信用が重視されるので創業時には「民間融資」を受けるの難しいといえます。

融資の中で「民間融資」には、主に長期資金を調達する具体的な借入条件を明示した契約書を交わす「証書貸付」と、短期資金の調達するためには、普通預金が不足した場合に定期預金から引き落とす「当座貸越」、金融機関に1年未満の約束手形を振りだす「手形貸付」、取引先の手形を買い取ってもらう「手形割引」の3つがあります。

 

エステサロンの開業に使える借入・融資①「新創業融資制度」

 

エステサロンを創業するには、運転資金や設備資金が必要です。創業は不確定要素が大きく、事業の成功確率は高いとは言えません。リスクが高いといえます。

エステサロンをこれから創業する方或いは創業間もない方の資金不足を補う公的融資を活用してみてはいかがでしょうか。創業段階で活用しやすい2つの融資制度があります。日本政策金融公庫の「新創業融資制度」と自治体の「制度融資」です。

ここでは「新創業融資制度」について説明します。申請する場合の条件として以下の3つを満たす必要があります。

  1. 創業予定者あるいは税務申告を2期終えていない方で実質的に事業を開始している「創業要件」
  2. エステシャン等の従業員を雇用した開業、ニーズがあり差別化されたエステテクニックやサービスの提供、過去にエステシャンとして勤務経験がある等の「雇用創出等の要件」
  3. 税務申告を終えていない場合は、創業資金の10分の1の自己資金を確認できる「自己資金要件」です。

融資限度額は、3000万円(運転資金1500万円)。担保・保証人は不要。貸付利率2.8%以下、返済期間は利用する融資制度によります。新規開業資金を利用する場合は、返済が2年間猶予され、最長で設備資金は20年以内、運転資金は7年以内です。注意していただかなくてはならないのは、「新創業融資制度」は、単体では使えません。

日本政策金融公庫の新規開業資金や女性・若者/シニア起業家支援資金他の融資制度と組み合わせて利用します。

その場合は、融資限度額は他の融資制度の融資限度額ではなく「新創業融資制度」の融資限度額となります。融資の申請条件の3つをクリヤーして審査対象となっても審査が通って融資のされるのは30%程度だといわれています。

融資の審査のポイントは、自己資金比率と創業計画書の内容と実現性です。実績としては、自己資金比率は30%以上ある方が審査を通過している例が多いようです。

できるだけ自己資金比率を高める事と実現性を説明する創業計画書の内容を充実させる必要があります。融資の獲得確率を上げるために創業計画書の作成にあたっては、中小企業診断士等の専門家の活用をお勧めいたします。

 

エステサロンの開業に使える借入・融資②「新規開業資金」

 

エステサロンで新規開業をお考えの方に使っていただきたい「公的融資」が「新規開業資金」です。

「新規開業資金」はこれから事業を始める方や事業を始めてから7年以内の方を対象として日本政策金融公庫で行う融資です。単独で活用する場合は、「国民生活事業」と「中小企業事業」の2つがあります。

「国民生活事業」は、対象が個人事業主やベンチャー企業等の小規模企業です。融資額も小口資金融資が中心で融資額の平均は700万円です。

「新規開業資金」は、先にご紹介した「新創業融資制度」の満たすべき3つの要件の内 「雇用創出等の要件」だけ満たせば対象となります。

具体的には、エステシャン等の従業員を雇用する事、エステシャンとして勤務経験があること、創業塾等各種公的支援を受けて事業を開始すること、民間金融機関と公庫を同時に利用すること等の11の項目の項目のいずれかを満たし、事業開始後7年以内であれば融資対象となります。

特に適切な事業計画があれば要件を満たさなくても1000万円以内であれば融資されます。融資限度額は、7200万円(運転資金4800万円)。担保・保証人は個々の案件ごとに相談です。実際融資は無担保で300万円から700万円となっています。

担保・保証人は、希望により相談ですので個々の融資案件によります。貸付利率は、2.8%以下ですが、Uターン等により地方で新規開業する等の要件を満たせばより低い特別金利が適用され有利な融資条件となります。

返済期間は、設備投資で20年、運転資金で7年以内です。融資を受ける場合には事業計画書等が正しく策定され実行できると公庫の審査で認められなければなりません。

特に1000万円以下で無担保での融資を希望する場合は正しく策定され実行できると公庫で審査される事業計画が必要です。

 

エステサロン経営者が借入・融資を受ける際の注意点

 

エステサロンを経営する上で融資を受ける場合、気を付けなくてはならないことがあります。融資はあくまで借金です。事業の収益から利子をつけて返済するのが前提です。従って、融資を受ける際に考えておかなければならないことがあります。

一つ目は、融資を受ける必要があるかないか確認する事です。融資は受けるだけで利子を払わなくてはならないからです。銀行は貸出によって利益を得ていますから貸出限度まで貸してくれますが、その金額はほとんどの場合必要な金額より多くなります。必要な融資とはどんな場合でしょう。

  1. 大きな売上が上がった時等に発生する支払いに対する入金の遅れの時間的なずれの解消のために行うつなぎ融資。
  2. 仕入れ代金の支払いのための融資。
  3. 収益に貢献できる機械設備や社屋等の固定資産を購入するための融資。融資は必ず成功するという前提で最小限度にとどめなくてはなりません。

二つ目は、メリットとデメリットがある事です。融資は現金を受けとるわけですから当然メリットがあります。使えるキャッシュフローの総量が増大しますから急にお金が必要な時に投入できます。

一方、利子の返済という対価も支払わなくてはなりません。返済は税引き後利益からしかできません。毎月返済しなければならず利益を圧迫するというデメリットがあります。

三つ目は、融資を受ける場合には、限度額があることです。いくらでも借りれるわけではありません。返済能力に見合った金額しか借りられません。月に返済ができる金額は、税引き後利益と減価償却費の合計を12で割った数字です。

また、一方で貸す側からすると会社を清算した時に返済できる金額とみることもできます。売掛金等のキャッシュとなるものから、買掛金等の借金以外で払わなくてはならない金額の差額が上限金額となります。

 

エステサロン経営者が借入・融資を受けるメリット

 

エステサロン経営者が融資を受けるメリットを具体的にご紹介します。

一つ目は、資金を手に入れることができる事です。融資を受ければ普通は利益を出した時にしか手に入らないキャッシュを簡単に手に入れることができます。

この資金を使って積極的に人や設備、店舗に投資しエステサロンの事業を急拡大する可能性を高めることができます。

融資を受けることができなければ、年々着実に売上、利益を上げ内部に資金を留保して、資金の蓄積を待って事業を拡大しなければなりません。

数年分の利益に相当する金額の融資を受けることで自社の店舗の拡大や支店の開設など一気呵成に事業拡大をはかることができます。

しかし、急速な事業の拡大は、従業員への経営理念の浸透せずにサービスレベルが悪化したり、人材育成が間に合わず一部の従業員の負担が多くなり離職を招く等の可能性があります。

事業の急拡大はりスクが大きく、資金以外の面での十分な準備が必要です。

二つ目は融資で資金を留保し、いざという時に使えるようにすることができる事です。業績の比較的良い時や事業計画等で将来展望を描けたときには比較的融資を得やすいですが、業績が悪化した時や先が見えず当面の資金繰りに行き詰った時には融資は受け辛いです。

エステサロンの経営が苦しく融資が受けられない時に社長の自己資金から資金を投入しなくてはなりません。

融資をうけることで、そういう事態を想定し社長の自己資金を留保することができます。これにより、環境変化に対応するための備えをすることができます。

 

エステサロン経営者が借入・融資を受けるデメリット

 

エステサロン経営者が融資を受けるデメリットを具体的にご紹介します。

一つ目は、融資は借金ですから返済しなければならない事です。従って、融資の返済が始まれば返済できるだけのキャッシュフローを常に確保しなければなりません。税引き後利益から返済することになるので最終的に純利益を圧縮することになります。

このことは、エステサロンの経営判断に制約を与えます。エステシャンである従業員がお客様に満足していただき事業価値をつくる事業ですが、お客様の満足でなく店の利益率を重視する経営となりやすくなります。

二つ目は、経営判断を制約することになります。毎月の返済に追われてキャッシュフローを確保するために売上を確保しなければならなくなります。
融資の返済が経営の自由度の足かせとなります。

三つ目は、融資で得た資金で不用意な投資をしてしまう傾向がある事です。融資はいずれ返済しなくてはならないものです。融資によって得られた資金で返済額以上の付加価値を生み出すことが前提となっています。

投資に対して慎重さがなくなり、付加価値を生み出さない投資を繰り返し、返済が大きな負担となって経営を苦しめる場合があります。融資で得た資金は、新しい価値を生み出すものを慎重に選別し集中して投資しなくてはなりません。

 

エステサロン経営の借入・融資に事業計画書は必要か

 

事業計画書は、夢を実現するための具体的な行動を示すものです。日本政策金融公庫や銀行に対して事業計画の実現性を評価してもらい返済能力を証明するために説得力のある事業計画書を作成することが必要です。

メリットの一つ目は何といっても、融資等の資金調達で資金提供者に対してその事業の実現性をアピールすることができることです。

二つ目は審査を通過させ有利に融資を受けるだけではありません。事業のイメージを整理し可視化することで自身の考えを客観的に観ることができますし第三者に評価してもらいアドバイスを貰うこともできるようになります。

三つ目は、可視化により事業と係りを持つ関係者と理念や事業の方向性を共有することで協力を得やすくなり思いを実現しやすくなります。

計画策定時の注意点としては、一つ目は、説明内容は、根拠のある数値を使う等具体的で説得力が高まるように書く事です。

二つ目は、内部環境や外部環境、特に競合等に関してもれなく記述し、目標とする売上等の実現性を明確に示すために、戦略のストーリを示し根拠を明らかにする事です。日本政策金融公庫のホームページにある創業計画書の項目を例としてご紹介します。

  1. 創業の動機
  2. 経営者の略歴等
  3. 取扱い商品、サービス
  4. 取引先、取引関係等
  5. 従業員
  6. お借入れの状況
  7. 必要な資金と調達方法
  8. 事業の見通し

事業計画書は中小企業庁の「夢を実現する創業」、東京商工会議所の「開業ガイドブック」、日本政策金融公庫の「創業の手引き」をご覧になっていただけますと具体的に何を書かなければならないか確認できますのでご覧ください。

融資受けようとする申請先や融資の内容によって計画書の内容も変わります。

 

エステサロン経営の借入・融資に返済計画書は必要か

 

融資を受けるということは借金をするということです。資金繰りに追われて、無計画に借り入れを続けると借りられれば良いと考え、闇金等に手を出し事業をつぶしてしまう経営者もいます。

融資は麻薬のようなものです。そうならないように、しっかりとした返済計画の作成が必要です。融資を受ける金額は、返済可能額を上限とした範囲に限られます。

判断方法に3つあります。一つ目は、経常運転資金によるものです。「売掛債権+棚卸資産+仕入れ債務」です。事業活動では仕入れが先で入金は後となります。運転資金については、この範囲の金額であれば銀行等から融資は受け易いです。

二つ目は借入金月商倍数を用いるものです。金融機関で使われている指標です。借入金が月商の3倍までは健全、6倍を来れると危険とみなされます。

三つ目は、「税引き後当期利益+減価償却費」です。これが返済原資です。しかし、売上の入金や支払いが翌月という場合もありますので実数とは異なることが多く概算としてしか使えません。

この返済原資に基づく年間返済可能額の10倍以上融資することは困難と考えられています。より正確に将来の借入限度額を知るには、資金繰り表を用います。

月別損益計算書を作成してこれをベースに資金繰り表を作成します。資金繰り表の作成は手間がかかります。

 

エステサロン経営者が知るべき助成金・補助金の活用方法

 

エステサロン経営の中で必要な資金は、運転資金と設備資金です。エステサロンを維持、継続、拡大するにはこれらの資金は欠かせません。しかし、エステサロンは環境変化にさらされ、経営戦略の遂行にはリスクも伴います。

これを乗り越え、リスクを最小とする手段の1つに外部資金の活用があります。外部資金を得る代表的な方法は融資、補助金、助成金です。

この中で助成金は、事業計画の実現性を求められる融資や補助金と異なり、社会保険に加入していれば厳しい審査がなく、また要件を満たしてさえいれば原則受給ができます。さらに、返済や経費等の報告義務もありません。助成金は小規模事業の経営者にとって使い勝手の良い制度です。

エステサロンオーナーが知るべき助成金を紹介します。

 

①創業助成金

 

「創業助成金」は、エステサロンの創業・開業時の資金を支援します。

 

②トライアル雇用助成金

 

「トライアル雇用助成金」は、エステサロンの新規人材確保のために未経験者や1年以上離職していた人に試用期間を設けて雇用すること支援します。

 

③キャリアアップ助成金

 

「キャリアアップ助成金」は、エステサロンの従業員の定着を図るために非正規社員を正社員として雇用することを支援します。

 

④人材開発支援助成金

 

「人材開発支援助成金」は、エステサロンのサービス向上のために従業員の成長・育成を図る研修等の活動を支援します。

 

⑤人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)

 

「人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)」は、エステサロンの従業員の定着を図るための健康つくり制度等の雇用管理制度の導入を支援します。

 

⑥人材確保等助成金(人事評価改善等助成コース)

 

「人材確保等助成金(人事評価改善等助成コース)」は、エステサロンの生産性の向上を図るための人事評価制度や賃金制度の整備を支援します。

尚、助成金を受給する場合の共通の要件は以下の4つです。

  1. 雇用保険、社会保険に加入している
  2. 1名以上雇用している
  3. 労務違反がない
  4. 半年は会社都合の解雇をしていない

助成金を賢く使い事業運営に活用してください。

  • 早川剛(Tsuyoshi Hayakawa)
    早川剛(Tsuyoshi Hayakawa)

    中小企業診断士 東京協会城東支部 千葉労働局事業主支援アドバイザー 得意業務は、助成金の審査業務をメインに葛飾区創業塾、立石図書館ビジネス相談員として創業支援やものつくり補助金・小規模持続化補助金等申請支援活動を実施。 強みを生かし、新たなニーズからビジネスチャンスを探ります!

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