美容師たるものor美容師を目指すからには、自分のお店を持ちたい!と考える方は多いと思います。「自分が店を開くならこんなお店にしたいなぁ」と忙しい毎日を過ごしながらも理想の店を思い描く時間は、将来へのモチベーションとなり、仕事や勉強にも身が入るというものです。
美容師は美容室勤務であっても普通の会社員よりも「個人事業主」に近い働き方をしています。とはいえ、実際に美容室を開業するにはどんな準備が必要なのかは、普段の仕事の中では知る機会が少ないかと思います。
そこで、本コラムでは自分の美容室を持つ=「開業」するために必要な準備をまとめて紹介していきます。
美容室を開業するために必要な手続きとは?
美容室に限らず、商売を始める時には様々な手続きをする必要があります。開業する際の手続きをしないでいると、税金を多く払わなければいけなくなったり、そもそも手続きしないと開店できなかったりするものもあります。
美容室を開業する時に必要な手続きを分類すると、下記のようになります。
◆美容室でなくても必要な手続き
- 税務関係
- 社会保険関係
◆美容室を開業する時に必要な手続き
- 保健所への手続き
- 消防署への手続き
◆美容室でなくても必要な手続き
美容室でなくても必要な手続きは大きく分けて下記の2つに分かれます。
- 税務関係
- 社会保険関係
どんな手続きになるのかは開業を「個人事業主」でするのか「法人」でするのかで変わってきます。
- 税務関係
ざっくり言いますと「こんな事業を始めますよ~」と税務署などに報告する手続きです。手続き先は開業する地域を所管する、税務署や都道府県税事務所となります。
「青色申告」という言葉を聞いたことはありませんか?青色申告とは商売に関わる所得・税金を定められた方式で記帳して申告する確定申告です。青色申告をするには、複式簿記での記帳が必要になりますが、その分特別控除が受けられたり、赤字を繰り越せたりと、税金面で多くのメリットがあります。正確な方法で申告してくれた人へのごほうびです。
- 社会保険関係
社会保険関係の手続きは従業員を雇った際に必要となります。個人事業主で自分1人だけで開業するならしなくてもよい手続きです。
税務関係も社会保険関係も手続きで分からないことや迷うことがあった時は、手続き先に相談しましょう。税務署や年金事務所は税金や保険料をキチンと徴収するためにもしっかりと相談に乗ってくれます。
◆美容室を開業する時に必要な手続き
- 保健所への手続き
美容室は保健所の許可がないと営業できない業種となっています。詳しくは6章で説明します。
- 消防署への手続き
美容室は保健所の営業許可が必要だというのは、どこかで見聞きしていて想像がつきやすいかもしれませんが、じつは店舗を構えるためには消防署にも届出を出さないといけないのです。これも6章にて説明していきます。
「個人事業主」「法人」のどちらで美容室を開業するのか
「よしっ!美容室の開業手続きを始めよう!」と意気込んで税務署を訪問する前に、「個人事業主」で開業するか「法人」で開業するかを決める必要があります。
どちらを選択するかで必要な手続きの種類や書式が変わってくるだけでなく、様々な面で開業後に大きな差が出てくるので慎重に検討する必要があります。
そもそも個人事業主・法人ってなんなの?というところからお話したいと思います。
◆個人事業主
個人事業主とは読んで字のごとく、事業を営む個人を指します。なので、所得(利益)にかかる税金も所得税が適応されます。一般的には「自営業」と呼ばれ、開業手続きも比較的簡単で、開業届を出せば誰でもすぐに個人事業主になれます。
個人事業主は主に「屋号」でビジネスをしていきます。屋号は事業名や店舗名にあたるもので、会社名のようなものです。開業届に屋号を書いて提出することで、屋号名義で銀行口座を開設したり、様々な契約をしたりすることが可能となります。
屋号の付け方は自由なのですが、美容室のイメージを大きく左右する顔にあたります。どんな美容室にしたいのかをイメージして、自分の子供に名前を付けるように慎重に検討しましょう。
◆法人
法人とは「法的に人格を認められた」ものであり、人ではないけど法律上人のように取り扱われます。なので、人ではないけど住「民」税も支払います。個人事業主に種類はありませんが、法人にはいろいろな種類があります。
代表的な法人は、なんといっても株式会社。他にも一般社団法人や医療法人、社会福祉法人や学校法人、NPO法人や合同会社、合資会社などなど様々な種類があります。
資本金や登記費用が掛かり、設立費用や手続きは煩雑で負担がありますが、税金面や信頼面では個人事業主よりも有利であると言われます。
「個人事業主」「法人」のメリットとデメリット
個人事業主と法人について説明してきましたが、名前や届出の種類以外にどんな違いがあるのでしょうか?
この章では、個人事業主・法人のメリットとデメリットを紹介していきます。個人事業主と法人のメリット・デメリットはほとんど表裏一体になっているので、表で紹介します。
表中にある、住民税均等割は赤字でも払わなければいけない税金です。法人の場合、赤字でも7万円払わなければいけないのはなかなか痛いです。
メリット・デメリットからもわかるように、法人は色々と面倒なことがあるけど、その分のメリットがあります。法人を維持するためには面倒な処理をこなすことができる運営能力と事業の安定性が求められることもあり、法人=事業遂行能力がある=信頼性が高いと評価されます。
維持への労力がかかることもあり事業の規模は一般的に、個人事業主<法人というイメージになります。また税金面では法人税と所得税の税率の上昇の仕方の違いにより、利益がある一定以上大きくなると法人にした方が税金が少なくなるポイントがあります。
「法人成り」という手続きをすることで、個人事業主から法人に変更することもできるので、最初は小さく個人事業主で始めて、成長してきたら法人成りをするという「スモールスタート」が開業のセオリーと言われています。
しかし、事業の規模や業種によっては最初から法人の方がよい場合もありますので、計画中の事業が個人事業主・法人どちらにメリットがあるのかを検討することをオススメします。
さて、あなたが考えている美容室は個人事業主・法人どちらの方が向いているでしょうか?
メリット・デメリットを確認して、どちらで開業した方がよいかを検討しましょう。
「個人事業主」として美容室を開業する場合の手続き
前章で説明してきました個人事業主・法人の特徴を踏まえて、「個人事業主で開業しよう!」と決めた場合、どのような手続きをすればいいかを紹介していきます。法人での開業を考えている方は、次の章まで読み飛ばしてください。
個人事業主で美容室を開業する場合の手続きは税務署などへの届出と社会保険関係の届出、保健所・消防署への届出があります。社会保険関係は人を雇わない場合には、手続き不要です。
◆税務署などへの届出
◆社会保険関係の届出
個人事業主の開業手続きは比較的楽で、すぐにできます。手続きにかかる労力は少ないので、事業計画などに力を割いてよりよいビジネスになるように準備をしていきましょう。
「法人」として美容室を開業する場合の手続き
ここからは「法人で開業しよう!」と決めた場合の手続きを紹介していきます。個人事業主の開業と比べて手続きの種類や手間が多いですが、頑張って付いてきてください!
法人で美容室を開業する場合、定款認証⇒資本金払い込み⇒登記⇒税務署などへの届出と社会保険関係の届出という流れになります。社会保険関係は人を雇わなくても法人は、健保・厚生年金保険の加入が必須となっています。
◆登記までの手続き
◆税務署などへの届出
◆社会保険関係の届出
法人は開業に少なくない労力、時間、金額がかかります。その分社会的信頼性は高くなっています。定款など手続きとは別に必要な書類も多くあり、登記までの手続きでは専門的な知識が必要とされる場面もあります。
開業までのスケジュールを計画通り進めるために手戻りをなくすべく、必要な場面では専門家の力をかりることをオススメします。
美容室を開業するために保健所への届出は必要か!?
居酒屋やレストランといった飲食店は保健所から営業許可を受けなければならないのは、イメージできると思います。飲食店だけでなく美容室なども開業する時には、保健所に営業許可を受けなければいけません。
また、店舗がある場合は消防署への届出も必須となります。美容室の場合、保健所と消防署の届出は「個人事業主」「法人」どちらであっても提出が必要となります。
◆保健所への手続き
美容室は保健所の施設の立ち入り検査を受け、営業許可がないと開業できません。検査では美容室が備えなければならない設備や内装をチェックされます。
基準を満たせていないと、立ち入り検査後に工事のやり直し…なんてこともあるので、内装の設計ができて図面などが出来上がったら、工事をする前に保健所に事前相談をしましょう。
◆消防署への手続き
店舗の消防設備が基準を満たしていないと、もしもの時に人命にかかわります。そこで、店舗で営業するためには、営業所に届出を提出してチェックを受ける必要があります。
消防署への届出は、店舗の広さや入居する建物などによって提出する届出が変わってきますので、こちらも内装を設計できましたら消防署へ事前相談をしましょう。
保健所への届出の流れ・消防署への届出についてはこちらのコラムでも説明していますので、ぜひご覧ください。
(美容室を開業するために必要な手続き・届出:https://www.mkyou57.jp/2021/02/207)
美容室の開業に事業計画書は必要か!?
さて、これまで美容室を開業する際の手続きなどについて書いてきましたが、開業するためには事業計画書は必要なのでしょうか?
結論を言いますと、「無くても開業はできるけど、作ったほうが絶対良い!」です。
「開業はできる」と書いたのは個人事業主なら開業届を出せばそれでもう開業できてしまうからです。
では事業計画書とはいったいなんでしょう?
名前から察する通り、これからやろうとしている「事業」をどうやって運用していくか「計画」した書類です。英語で言うとビジネスプランです。
事業計画書を求められる最たる場面は、融資を受ける時です。融資審査の場面で金融機関が一番気にするのが、融資を受けにきた事業者が潰れずに貸したお金(+利息)をきっちり返してくれるかです。「この人の事業は大丈夫そうかな?」ということを金融機関は知りたいのです。そこで登場するのが事業計画書です。
事業を分かりやすく具体的に表現された事業計画書を見て金融機関はお金を貸すかを判断します。ちなみに絶対コレじゃなきゃいけないフォーマットはありません。金融機関でフォーマットを用意してある場合もありますが、必要な情報が載っていればとりあえずOKです。
金融機関専用フォーマットでの提出を求められても、すでに作った事業計画書の内容を転記すればそれほど時間はかかりません。
「私はお金借りないから、事業計画書を作らなくて大丈夫だ~」と思ってしまいがちですが、融資を受けない人でも、事業計画書は作ることをオススメします。
なぜなら、事業計画書はこれからやろうとしている事業の情報を整理し、方向づける指針となるからです。計画をせずに始める事業はまさに無計画なモノで、行き当たりばったり経営になってしまいます。
開業という大きな決断を当たるも八卦当たらぬも八卦で運任せにしてしまうのはとても危険です。ぜひ頭で思い描いている計画を「計画書」という紙面に落とし込んでみてください。
その計画がビジネスとして成り立つのか、生き残っていけるのかを判断する重要な材料となります。少なくとも下記の観点は、計画書を作る際にぜひ入れてほしいと思います。
- 理念(想い):なぜ美容室を開業するのか?
- ビジョン:どんなお店にしたいか?
- ターゲット:どんな人に向けてサービスを提供するのか?
- 商品:どんなサービスを提供するか?
- 収支:どれくらい売上があれば利益がでるのか?
とは言え、真っ白な紙から計画書を書いていくのはとても大変です。開業時の融資でお世話になることの多い日本政策金融公庫さんのホームページでは、事業計画書のフォーマットと共に業種別の記入例がアップされていて計画書作成の参考になります。
他にもネットで検索すると様々な形の事業計画書がでてきます。自分の事業にあった事業計画書を参考に「自分の事業とは、コレだ!」と説明できる計画書にしましょう。
日本政策金融公庫HP各種書式ダウンロード
(https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html)
美容室の開業に使える補助金・助成金とは
色々とやりたいことはあるけど、お金が心もとない…そんな時には融資だけでなく、補助金・助成金にも目を向けてください。補助金も助成金も国などからお金を支給してくれる制度で、返済しなくてもよいお金です。利用できるなら積極的に活用していきたい制度になっています。
補助金とは、主に経済産業省が管轄しており、生産性向上や販売促進などそれぞれのテーマに沿った取り組みを支援するために、一部費用をサポートしてくれる制度です。補助率と呼ばれる割合が存在し、すべての費用の○○%(上限XX万円まで)の範囲で補助金を支給するパターンがほとんどです。申請後には審査があり、評価点の高い順に採択されていきます。
助成金とは、主に厚生労働省が管轄しており、国が推進している雇用や健康増進に関する取り組みを支援するために、一部費用などをサポートしてくれる制度です。
雇用の維持・拡大やキャリアアップなど人に関わるものが対象になります。補助金との違いは採択率という概念がないことです。要件を満たしていればほぼ確実に受給できるので、事業の計算に入れやすい仕組みとなっています。
雇用関係助成金の申請支援は社会保険労務士(社労士)が専門なので、気になる方は社労士さんへの相談をオススメします。自治体の専門家相談窓口などに社労士さんがいらっしゃることも多いです。
また、当サイトmkyou57社で提携している専門家の中にも社労士さんがいらっしゃいます。ご興味ありましたら問い合わせフォームから問い合わせてみてはいかがでしょうか?
(mkyou57お問い合わせ:https://www.mkyou57.jp/contact)
美容室の開業に使いやすい補助金・助成金をいくつかご紹介します。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、従業員数などが少ない小規模事業者が対象の補助金で、販路開拓と新商品開発などの生産性向上の2つにかかる経費を補助する制度です。窓口は商工会・商工会議所になっています。
補助率は補助対象となる経費の2/3。補助額は上限50万円以内(複数の事業者が連携して取り組む共同事業の場合は100~500万円)となっています。
新型コロナウイルス対策の特別型は通常よりも補助率・補助額が緩和されています。
日本商工会議所小規模事業者持続化補助金メニュー(https://jizokukahojokin.info/)
IT導入補助金
IT補助金とは、中小企業・小規模事業者が事務作業の効率化やマーケティングなどにITツールを導入する際の費用を一部補助する制度です。補助率は費用の1/2。
補助額は450万円以内となっています。よろず支援機関や商工会・商工会議所などの支援機関が申請書作成を支援してくれます。
IT導入補助金(https://www.it-hojo.jp/)
若手・女性リーダー応援プログラム助成金(東京都)
東京都が若手や女性の創業を応援する制度です。年齢か性別、商店街に店舗を出店するなど要件がありますが、該当する場合は検討したい制度です。
助成対象となるのは
- 事業所整備費(店舗新装・改装工事、設備・備品購入、宣伝・広告費)400万円。
- 実務研修受講費6万円
- 店舗賃借料1年目:月15万円、2年目:月12万円
助成額は730万円以内。助成率は3/4(実務研修受講費は2/3)となっています。
若手・女性リーダー応援プログラム助成事業(https://www.tokyokosha.or.jp/support/josei/jigyo/wakatejosei.html#naiyo)
人材確保等支援助成金
人材確保等支援助成金は、人材の確保・定着を目的として魅力ある職場づくりのために労働環境の向上等を図る事業主に対して助成する制度です。人事評価制度や賃金アップ、教育訓練や健康づくり制度などの導入など、生産性向上や離職率の低下を図る様々な取り組みに対して利用できます。
(a) 雇用管理制度助成コース
(b) 人事評価改善等助成コース
(c) 設備改善等支援コース
(d) 働き方改革支援コース
(e) 介護福祉機器助成コース
(f) 介護・保育労働者雇用管理制度助成コース
(g) 中小企業団体助成コース
7つのコースがあり、それぞれ助成対象・助成額など条件が異なります。
厚労省 人材確保等支援助成金(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07843.html)
人材開発支援助成金
雇用する労働者のキャリア形成を効果的に促進するため、職務に関連した専門的な知識及び技能を修得させるための職業訓練等に対して助成する制度です。美容室で対象となるコースは、下記のコースとなっています。
(1)特定訓練コース
(2)一般訓練コース
(3)教育訓練休暇付与コース
(4)特別育成訓練コース
(5)障害者職業能力開発コース
それぞれ助成対象・助成額など条件が異なります。
厚労省 人材開発支援助成金
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html)
産業保健関係助成金
事業者が使用する労働者の健康管理、健康教育その他の健康に関する自主的な産業保健活動を支援することにより、労働者の健康確保を図ることを目的とした制度です。健康診断など従業員を雇う上で必須な健康管理にかかる費用を助成してくれます。
(1)治療と仕事の両立支援助成金
(2)ストレスチェック助成金
(3)職場環境改善計画助成金
(4)心の健康づくり計画助成金
(5)小規模事業場産業医活動助成金
(6)副業・兼業労働者の健康診断助成金
6つのコースになっています。助成する単位も異なるため、それぞれに助成額・助成対象が異なります。
労働者健康安全機構
(https://www.johas.go.jp/sangyouhoken/tabid/1251/Default.aspx)
補助金・助成金共通の特徴として気をつけておかないといけない点があります。
・入金は後払い
補助金は使ったお金に対して補助してくれるので、使えるだけのお金があることが前提です。入金までの期間を考慮しないでお金を使ってしまうと資金繰りが厳しくなりますので注意が必要となります。
・書類作成に時間がかかる
補助金も助成金もお金(原資は税金!)をくれる制度であるため、誰でも構わず支給するわけにはいきません。申請書類の作成には時間と手間がかかります。補助金の場合は審査されるため、適当に書類を作成しても採択される可能性が下がってしまいます。
申請のために時間を費やしてしまい、本業がおろそかになってしまっては本末転倒です。書類を作成する時間や労力に余裕がない場合や初めてでノウハウがない場合、作成を支援してくれる専門家に依頼するのもオススメです。
調査や計画立案から書類作成の指導など、申請に必要な仕事をサポートしてくれます。中には成果と不釣り合いな手数料を要求する悪徳な業者もいるので、信頼のできる専門家に依頼するのが肝心です。
美容室の開業に役立つ資格
美容師は国家資格で開業するためには免許が必要です。別コラムにて、美容室開業に必要な3つの資格を紹介しています。
- 美容師免許
- 管理美容師免許
- 実務経験
(美容室を開業するために必要な手続き・届出:https://www.mkyou57.jp/2021/02/207)
- は美容室の開業には必須
- は美容師を雇用する場合は必須
- も美容室を運営していくためには必須とも言えるしょう。
美容室はコンビニの約5倍の店舗数がある、競争の激しい業界です。そんな厳しい世界で生き残っていくためには、ファンを獲得できるサービスの提供が求められます。
ライバルとの差別化を図るために、他の美容系サービスの知識や専門技術を取得して、メニューを拡充することも考えられます。
美容師以外の美容系資格は免許制ではなく、資格が「知識や技術の証明」として機能します。
お客様の立場からしても、資格保持者だとサービスレベルが担保され、安心してサービスを受けることができます。つまりは信頼性の向上へとつながっていくのです。
その中でも、美容室と親和性の高い資格をいくつか紹介していきます。
◆エステティシャン
エステティシャンは複数の協会があり、それぞれに認定資格を用意しています。
・日本エステティック協会(AJESTHE)
基本資格「AJESTHE認定エステティシャン」
上級者資格「AJESTHE認定上級エステティシャン」
日本エステティック協会(https://ajesthe.jp/)
・日本エステティック業協会(AEA)
基礎資格「AEA認定エステティシャン」
上級資格「AEA上級認定エステティシャン」「AEA認定インターナショナルエステティシャン」日本エステティック業協会(https://www.esthesite.jp/)
・日本スパ・ウェルネス協会
基礎資格「認定エスティシャン」
上級資格「ビューティセラピスト」
日本スパ・ウェルネス協会(https://www.spa-wellness-japan.or.jp/)
◆ネイリスト
・日本ネイリスト協会(JNA)
「ネイリスト技能検定試験」3級・2級・1級
「JNAジェルネイル技能検定試験」初級・中級・上級
「JNA認定ネイルサロン衛生管理士」
日本ネイリスト協会(https://www.nail.or.jp/)
◆メイクアップ・着付け
・日本メイクアップ協会(JMA)
「日本メイクアップ技術検定試験」3級・2級・1級
日本メイクアップ協会(http://www.jma-makeup.or.jp/)
・全日本着付け技能センター
「着付け技能検定」2級・1級
全日本着付け技能センター(http://www.kitsuke.or.jp/index.html)
独学で取得できるものもありますが、スクールに通ったり実務経験が必要であったりとするものもあり、楽に取得できるものではありません。しかし、その分資格を取得した時には「プロ」としての信頼性につながっています。
また、資格そのものより実務経験を積み資格を取るまでの過程で得た技術や知識は、身を助ける武器となるのです。
美容室の開業後の集客方法
無事開業できたあとでも、やることはいっぱいです。なかでも、いかに集客できるかが事業を継続していく上で肝心です。集客方法は大きく分けて、「オンライン」「オフライン」の2つに分類されます。
みなさんは髪を切りたいと思ったとき、どのように美容室を探しますか?今はネットで検索する人が多いと思いますが、友人からの紹介・口コミなんかもありますよね。
闇雲にプロモーションしてもお金がかかるばかりであまり効果がでません。どのような集客方法が効果的なのか、開業した美容室に合っているのか検討してからの実行をオススメします。
◆オンラインの集客方法
総務省の調査で2018年にはスマホ保有率が8割と生活とインターネットはより身近で欠かせなくなっています。オンラインでの集客は物理的な距離や時間に左右されず多くのお客様候補にアプローチできます。
代表的なものに、下記のようなモノがあります。
・自社ホームページ
見た目や内容の自由度が一番高く、美容室のブランドイメージが伝えやすくなります。ホームページを持っていることで初めてのお客様にも安心感を与えることができます。美容室に関する情報量は他の方法に比べ一番多く、予約機能なども付けることができます。
一方、自力で効果的なホームページ作成が難しく、ホームページに訪れてもらうために検索上位に来るようにSEO対策も必要となります。高い効果を発揮するためにも、ホームページ作成・運営を代行する業者への依頼も一般的になっています。
・プラットフォームサイト
美容室・エステサロンだとHotPepper Beauty、レストランだと食べログなどが代表的なサイトとなります。美容室探しで最初にアクセスする可能性が高く、情報がまとめられており予約や決済代行機能もあり利用者にとってメリットがあるため、プラットフォームサイト内で検索する人も多いです。
しかし、フォーマットが限られているので美容室の雰囲気や特徴を伝えるのに限界があり、情報が集約され比較しやすいがゆえに価格が注目されがちです。そして掲載に費用がかかるなどデメリットもあります。
・メルマガ
メールアドレスを登録してくれたお客様に対し一斉にメールを配信する方法で「メールマガジン」の略です。無料で使うこともでき、情報提供やメルマガ限定クーポンなど内容に工夫を凝らすことで既読率が上昇し、お客様と定期的な接点を確保できるメリットがあります。
・SNS
いまやプロモーションでは必須のツールとなっているのがSNSです。Facebook、Twitter、Instagramなど美容室探しにネット検索でなく、SNSで検索する層も存在します。
ユーザーの属性が分かるため美容室のSNSを開設しうまく運用していくことで、ターゲット層にアプローチができます。特に、SNS広告を利用すれば、年齢、既婚・未婚、居住地などターゲットを絞って広告を配信できます。これは他のツールではやりたくてもできない機能となっています。
また、Instagramは女性ユーザーが多い、Twitterは若年層が多いなどサイトによっても特徴があるので、ターゲットに合ったサイトを利用することをオススメします。
◆オフラインの集客方法
オフラインとは、オンラインの逆でインターネットを使用しない方法です。アプローチできる範囲はオフラインよりも狭いですが、商圏や店舗前にいる人を店舗に誘導する効果があります。物質的なモノを介すため手に取ってもらえば、オフラインの方法よりもじっくり見てもらえる傾向にあります。
代表的なものに下記のような方法があります。
・チラシ
オフライン手法の代表的な方法です。チラシでも、新聞の折込広告やポスティング、チラシ配りなど方法はいくつかあります。配る以外でも店頭に置く、会計時に渡すなどの方法もあります。
特に店舗周辺でのチラシ配りは、商圏内(店舗が行動範囲)にある人に直接アプローチができ効果的でありつつ、他の方法に比べてローコストで実施できます。チラシ配りのポイントは、一度にいっぱい配布するのでなく、多くなくてもいいから、何度も同じ場所で配布すると、通行人の記憶に残りやすくお店が認知されやすくなります。
・看板
看板というとお店に必要なもので、集客方法と言ってもピンとこないかもしませんが、とても大事な集客手法です。看板にも種類があり、店名を掲げただけのものもあれば、店頭に出す立て看板やポスター看板などがあります。
注意を引くような色や形、興味関心を向けるキャッチフレーズなど記載した看板を設置することで、店舗に入ってみようという動機につなげられます。逆にイマイチな看板だとまったく気づかれなかったり、入店が不安になってしまったりする可能性もあります。
看板は最後の最後でお客様の背中を押すこともあれば、遠ざけてしまうこともあるのです。様々なお店の看板をみて回りデキのいい看板の特徴を把握し、お店にあった看板を作成が求められます。
・ポイントカード
ポイントカードは今までの方法とは別に、一度来てもらったお客様に対してアプローチするツールです。一般的に新規のお客様を獲得するよりも、既存のお客様に再度来店してもらう方がコストが低く効率的です。
ポイントがたまることでお客様にメリットがある仕組みにすることで、再来店の動機になりお客様を囲い込む効果があります。リピーターの獲得・維持は美容室の継続のために重要なファクターとなります。
・紹介状
紹介状は口コミを誘発するためのツールとして役立ちます。お客様の美容室へのイメージが良くても、普段の会話のなかで友人へ勧めるような話にはなかなかなりません。
]
そこに紹介状があれば、「そういえば、こんなモノがあるから行ってみない?」と勧めるキッカケとなります。口コミは美容室のような体験価値が重要なビジネスでは、かなり影響が大きいモノです。
顔見知りの口コミは信頼性が高く感じる傾向にあるため、紹介状は口コミからの新規のお客様獲得に役立つ方法となっています。
お客様の獲得はまさに死活問題です。より効果的にターゲット顧客にアプローチできる方法を選択していくことが必要となります。