お客がリピーターになってくれるかどうかはお店にとって大変重要なことですよね。だからリピーターを色々分析して、リピーターを増やす方策を考えなくてはなりません。その分析のもとになるのがリピート率というものです。
美容室にとってのリピート率とは?
リピート率(%)=リピーターの総人数÷新規顧客の全人数×100(%)
新規のお客様が再来店する割合です。業界平均値は、60日で25~30%,90日で30~35%程度だそうです。
例をあげますと1か月に10名の新規来店者があり、そのうち3名が翌月に再来店したとすると、60日のリピート率は3÷10×100=30%となります。
その翌月最初の10名の新規来店者のうち1名が再来店したとすると、90日のリピート率は、(3✙1)÷10×100=40%となります。その他に役に立つリピート率があるので紹介しましょう。
カット、カラー、パーマ等技術別にリピート率を出してみて、低いリピート率のものがある場合は、その原因が料金なのか技術に問題があるのかなど分析する材料になります。
同様にスタッフ別の指名リピート率も重要で、リピート率の高いスタッフの高い理由を分析しその長所をスタッフ間で共有すれば全体のレベルアップにつながる可能性があります。
また、お客様の性別、年齢層、主婦か勤め人かなどによるリピート率を計算し、当初ターゲットにした層と合っているかなど検討することもできるでしょう。
逆にリピーターを失客したときにはその時のメニュ―は何だったのか、なにか問題があったのではないかというような観点からの検討も有効かもしれません。
美容室にとってリピート率はとても重要!?
もうお判りでしょうが、リピート率はなぜ重要なのか ということですが、それはサロンの収益に直結するからです。リピート率が上昇すれば収益が上がりますし、リピート率が下がれば収益に悪影響を与えます。リピート率と収益の関係を数字で例をあげ理解を深めていただきましょう。
例えば、10万円の広告宣伝費で平均単価10,000円の新規顧客を20人獲得したとします。
収益は 10,000円×20人-100,000円=100,000円 となります。
この20人のうち30%(20人×0.3=6人)がリピーターになったとすれば
収益は 10,000円×(20人✙6人)―100,000円=160,000円 となり、100,000円の広告宣伝費で160,000円の収益となり、60,000円アップします。
次に20人のうち、10%(20人×0.1=2人)しかリピーターにならなかった場合を計算します。
収益は 10,000円×(20人+2人)―100,000円=120,000円 となり、リピート率が20%減少すると40,000円(25%)減少します。
このようにリピート率は美容室の収益に影響を与える重要なファクターです。
リピート率が上がることによる美容室への効果
以上見てきたように、リピート率は美容室にとって大変重要な要素ですね。
もう少し検討しましょう。やや極端かもしれませんが、50%(20人×0.5=10人)がリピーターになったときは、
収益は 10,000円×(20人✙10人)-100,000円=200,000円 となり、リピート率が20%増加すると40,000円(25%)上昇します。
このように、リピート率の上昇は収益を大きく押し上げます。
今は1回のリピートを考えましたが、これが何回も続けば収益に与える影響は甚大なものになります。上の10人の顧客が月1回6か月間来店いただくと、効率的に広告宣伝費ゼロでも月間10万円が確保され、6か月で60万円の売上に繋がります。
是非、リピート率を上げ、さらにはそれを継続するように工夫努力を怠らないようにする必要があります。広告宣伝費を使わずに効率的に収益を上げることができます。
そしてお店にとって優良顧客として囲い込むことができることになります。顧客はお店に満足していただいていることになるわけですから、その友人や知人に紹介してくれたり、PRしてくれることにもつながる可能性があります。勿論そのための大変な努力が必要であることは言うまでもありません。
集客できずリピート率が上がらないのはどうして?
集客のためにはリピート率が重要であることがご理解いただけたと思います。しかし、集客が十分でなく、収益が上がらない場合はリピート率に問題はないか、もしそうであればリピート率が低い原因を突き止め、改善することが必要ですね。
どうして来店されないのか、リピート率が低い要因がいくつか考えられますので、一緒に考えてみましょう。
ターゲット層の設定があいまいでミスマッチが起きている
リピート率が低い理由の一つに、ターゲット層の設定があいまいで、結果として求める客層と来店した客層にずれがあったことが挙げられます。
例えば、美容室のターゲット層が30~40歳代の女性なのに、店内の雰囲気やスタッフが派手な状況では、お客様は再来店してくれなくなる恐れがあります。
ターゲット層はしっかり設定し、店作りその他はそれに合わせたコンセプトに統一しなければなりません。
クーポンなどで新規価格を安くしすぎている
新規のお客様に対する価格を安くしすぎるのも、リピート率を下げる原因となります。最初だけ安くても次から高くなるのでは、リピーターにはなりにくいと思います。安さだけを理由に来店したお客様はリピーターになる可能性が低いため、初回クーポンを安くしすぎるのは避けたほうがよさそうです。
フォローが足りない
来店後のフォローがないままだとお客様は美容室の存在を忘れてしまい、他の店に行ってしまいます。お客様には次回の予約をすすめたり、次回の割引券を配ったり、毎月DMを送ったりしましょう。お店がお客様を常に意識して、お客様もお店を意識していただくように努めましょう。
他の美容院と差別化されていない
ほかの美容院と差別化できることがないとお客様は別のお店に行ってみようという気持ちになります。カットやカラーではどのお店も同じようなレベルでしょうから、お客様の悩みを聞き出し、お客様に寄り添いその悩みを解決して差し上げるという差別化が大切です。悩みを解決できればお客様に感動を与えることができ、リピーターになることが期待できます。
お客様の特徴を把握してリピート率を上げる
さあ、美容室の開業です。しかし、ちょっと待ってください。美容室といっても色々あります。ご自分の美容室のコンセプトをはっきり決めておく必要があります。
「誰に」「何を」「どのように」サービスを提供するのか、前もって考えておきましょう。そのような戦略を立てるためのマーケティング手法には多様なフレームワークがあります。
ここでは「STP分析」をご紹介します。STP分析とは、変化する市場のなかで、自社が有利に戦えるポジションをさがすためのツールです。
STPは「Segmentation(セグメンテーション)」「Targeting(ターゲテイング)「Positioning(ポジショニング)」のそれぞれの頭文字をとったものです。
セグメンテーションで、市場を細分化して自分の美容室が戦う市場をきめて、ターゲティングでターゲット顧客層をきめ、ポジショニングで美容室の立ち位置を明確にし、他と違う独自性や優位性を決めて、開始しましょう。
この章では、セグメンテーションについて述べましょう。セグメンテーションでは、市場を細分化し、セグメントごとのニーズを把握します。それをもとに自分の美容室のコンセプトを固めていきます。出来る限り市場を細かく分割すれば、それだけターゲティングの際に明確なニーズが見つけやすくなります。
消費者相手の市場では主に以下の4つの変数を用いて考えます。
地理的変数――都道府県、地域などでセグメントします。そして、規模、人口、気候、文化、発展度、習慣などで考えます。
人口動態変数――人に関する項目でセグメントします。性別、年齢、収入、家族構成
学歴などで考えます。
心理的変数――心理的要素に関する項目でセグメントします。価値観、社会階層、性格、
ライフスタイル、購買動機などで考えます。
行動変数――行動に関する項目でセグメントします。購買活動、購買プロセス、購買メリット、使用頻度などで考えます。
変数を用いて市場をセグメントする際には、「4つのRの原則」を意識するとよいでしょう。
- ・Rank(優先順位づけ):重要度に応じて、顧客層をランクづけできているか
- ・Realistic(有効規模):十分な売上高と利益を確保できる規模のセグメントか
- ・Reach(到達可能性):顧客にサービスを確実に届けることができるか
- ・Response(測定可能性):顧客層からの反応を分析できるか
これを満たすように考えることで、効果的なセグメントが見つけやすくなります。
集客したいお客様層を決めてリピート率を上げる
次にこの章ではターゲティングについて考えましょう。ターゲティングとは、美容室に来てほしい対象者を絞り込み確定することです。
なぜ絞り込むのでしょうか。幅広く誰でも来店してくれるようにした方が良いのではないかと思う人もおいでかもしれません。
そうすると、あなたのお店に合わない人が来たり、他の店も同じだ、ということでリピーターになってくれません。これまで述べたようにリピーターになってもらうことが重要なのです。
広告も漫然と名前と美容室であること、場所、電話番号を書くだけではいけません。見ず知らずの人に皆さんの美容室を知ってもらい、興味を持ってもらい、選んでもらって来店いただくような内容にしなければなりません。
ターゲットをあいまいにしないで年齢層を絞り、どんな悩みを持つ人に、他の店とは違うどういうサービスを提供しようとしているのかをはっきりさせましょう。
ただ絞ると言っても、あまり特殊なことに絞りすぎると、顧客が限定されすぎて、売上を伸ばすことができないので注意が必要なのは当然です。
ちなみに売上の計算方法は、客数×客単価×回数で表せます。ご存じのとおりです。もう一つご紹介します。ターゲットリーチ×トライアル率×リピート率 という公式です。
ターゲットリーチとは広告がどのくらいターゲットに届く(リーチ)か、みてもらえるか、ということです。ターゲットリーチが高い広告なら、少ない量でも十分に集客できます。
トライアル率とは、広告を見た人のうち何人がお試し(トライアル)してくれるか、ということです。
リピート率は説明の必要はありませんね。ターゲットを絞り込んで、それに合う媒体を選び興味を持ってくれるサービスは何か、それをどう表現するかが重要ですね。
お店の特徴を把握してリピート率を上げる
ターゲット層が決まりました。もうそれで終わりかというとそうではありません。そのターゲット層を狙っているお店が近隣にあるかもしれません。そうそう、これまでSTP分析の話をしてきましたが、その前提として調査という項目が必要です。
近隣のお店にどんなお店があるか調べておく必要があります。前を通り外観を見てみたり、ホームページを探して内装、価格帯、サービスの内容、特徴的なことは何か、など調べて参考にします。
場合によっては気になったお店には客として行ってみるのもいいかもしれません。説明が後先になりますが、本来は調査の後に、セグメンテーションをし、ターゲット層をしぼり、ポジショニングをしてください。ポジショニングというのはわかりにくいかもしれないので、有名な経営学者のP.コトラー先生の文章を引用します。
「たとえばボルボは、自社製品を世界で最も安全なクルマと位置付けている。クルマのデザインやテスト、広告などによって、そのポジショニングは強固なものとなる。
ポジショニングとは、顧客の心のなかに、企業が提供するオファーの主要なベネッフィットと差別点を植え付ける努力のことである。」(「コトラーの戦略的マーケティング」ダイヤモンド社)と述べています。近隣のお店とは違う素晴らしい点を顧客に理解してもらえれば、リピーターになってくれるでしょうし、口コミで知人にも紹介してくれることも期待できます。
リピート顧客も新規顧客も重要
お店のとっては、これまで述べてきたように、リピーターは大切なお客様です。コストをあまりかけずに継続して売上に貢献してくれます。特に創業期ではリピーターがいないのですから新規顧客の獲得に努めなければなりません。創業期でなくても、リピーターも目移りして減少していく可能性もありますから、新規顧客が必要です。では一体どちらを大切にしたらよいのでしょうか。まず両方のメリット・デメリットを整理してみましょう。
リピート顧客を大切にするメリット・デメリット
一般的に「売上の8割は2割の優良顧客(リピーター)からあげている」(パレートの法則)と言われております。ですから、リピーターを大切にするという戦略をとるわけです。
また、この戦略は新規顧客獲得のため必要になる広告宣伝費などの経費も低く抑えることができるというメリットもあります。
しかし、一方でリピーターを重視するあまり、新規顧客を逃してしまうというデメリットもあります。新規顧客の獲得をおろそかにしていると、リピート客が離れていったときになすすべがなくなるということもあり得ます。
新規顧客を大切にするメリット・デメリット
新たにお店を開業しようとする人は、顧客がいないのですから、新規顧客の獲得に必死に努力することになります。他のお店からお客を奪うことにもなります。
一般に新規顧客獲得のためのコストはリピーターを維持するためのコストの10倍以上かかると言われています。
新規顧客を満足させることができれば、リピーターにつながる可能性があります。つまり
新規顧客を大切にするということはリピーターにつなげる重要な戦略なのです。
デメリットとしては、新規顧客をリピーターより大切にしすぎると、リピーターからの不満を買い
お店を離れていく危険性があります。
ではどうすればよいか
開業間もない時期は新規顧客を獲得に全力をあげることになるでしょう。努力が実りリピーターの数が十分になればリピート顧客重視で運営すればよいと思います。
しかし、顧客リスト等で顧客の状況は常に把握し、顧客数が減少してきたらすかさず新規顧客獲得の手を打たねばなりません。
いずれにしてもお客様あっての美容室です。お客様の状況に常に目配りし、新規であれリピーターであれ、お客様につねに寄り添い、お客様のために最善のサービスを提供することが大切です。
美容室で使える集客方法
まず新規顧客を獲得し、そのお客様をリピート顧客になってもらい、さらにお店の評判が
ブランド化していけば長期繁栄を手にすることができます。
そのことを常に頭に置き日々の経営を行っていくようにしたいものです。それではその新規顧客を得るための集客方法を見ていきましょう。
折込チラシーーー新聞に折り込まれるチラシは、古くからある古典的な方法ですが、地域の人に便利に利用していただくという観点からは有効な方法でしょう。
製作する際はデザインやキャッチフレーズに注意して、目を引くようなものにする必要があります。ただ最近は新聞を取らない家庭も増えているようなのが心配です。ターゲット層をどこに置くかにもよりますが。
ポスティングーーーご近所などの狭いエリアの人を対象にする場合にはチラシのポスティング効果的でしょう。
この場合は新聞を取っているか否かは関係ありませんね。デザインやキャッチフレーズに気をつけてください。
集合住宅だと見ないで近くのごみ箱直行という危険性もあります。
ダイレクトメールーーー名前、住所がわかっている場合は、確実に届く方法です。手書きのダイレクトメールは心に響きやすいともいわれています。
街頭配布―――チラシやテイッシュ配布を駅前や街頭で行えばコストはかかりますが一定の効果は期待できます。
紹介―――すでに顧客になっている方からの紹介は効果が出やすい方法です。すでにリピーターになっている方にお願いしてみましょう。
更には、紹介してくれた場合に、紹介者と紹介された方の双方に割引の特典付与を制度化するのもよい方法かもしれません。
ホームページーーー今の時代ホームページを持つことは常識になっていますが、お店の売りを上手に表現したものにする必要があります。
また、検索エンジンの上位に表示されるようなテクニックもありますので専門家に相談されるとよいでしょう。
看板―――街なかで目につきやすい看板を設置することも大切です。
美容室で使えるマーケティング手法
次に美容室の開業や経営に参考になる経営理論をいくつかご紹介しましょう。前に述べた
STP分析は大切な手法ですがここでは省略させていただきます。
SWOT分析―――創業の際、最も一般的な分析手法の一つです。自社の強み(Strength)と弱み(Weaknesses),機会(Opportunities)脅威(Threats)を詳細に調査・分析し、強みを生かし、弱みに手当をすることを考えます。
その2つが内部環境分析です。外部環境分析として機会、脅威があります。やりたい事業に追い風が吹いているか、または逆風下にあるか考えて総合的に判断するという手法です。
この分析は補助金等の優遇措置を得るための申請書に求められることが多いようです。
マーケティングの4P分析―――4PとはProduct(商品)、Price(価格)、Promotion(販促)、Place(立地)の頭文字をとったものです。
美容室の商品は美容サービスですが、色々な美容サービスの中身を慎重に検討する必要があります。次に価格も近隣のお店の料金を調べ価格競争ではなく、コストパフォーマンスをよくすることが大切です。
販促の手段はこれまで述べた通りで、立地についても非常に重要な要素ですね。これも別の項で研究しましょう。
3C―――3Cとは、Company(自社)、Customer(顧客)、Competitor(競合)の頭文字をとったものです。経営をする場合に自社の状況、提供するサービス、顧客のニーズ、競合店の状況をつぶさに検討し整理する視点を提供します。
ペルソナ・マーケテング―――これは理想の顧客像を設定し、その個性を想定して、顧客が何をもとめているかを考え、そのニーズの解決法を探し、収益の源泉にするというものです。
PDCA ―――Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)からとったもので、これは、創業し、計画を実行して、その結果を検証評価して改善に役立てていく手法です。このように、常に現状を把握し、改善すべき点を見つけ、成長につなげていかなければなりません。