かつては手書きで記帳していた帳簿も、時代の移り変わりに伴い随分とIT化が進みました。
美容室経営者が作成する帳簿には、売上帳・経費帳・売掛帳・買掛帳・現金出納帳・日計表などの経理に使用する帳簿類と、顧客名簿・シフト表・予約表などのサロン運営に使用する帳簿があります。
経理ソフトとは?
経理に使用する帳簿はたくさん種類がありますが、美容室の売上は基本的に現金売上がほとんどで、ほかにクレジットカード・電子マネー売上がある程度です。
請求書を発行する掛け取引や、後日入金される売上がない場合には、シンプルに売上帳と現金出納帳を最低限用意すれば十分でしょう。
経理ソフトは会計ソフトとも呼ばれ、いままで手書きで行われてきた日々の経理処理や確定申告書の作成を、経理初心者でも簡単な操作で扱うことができるため、大変便利です。
経理ソフトは大きく分けて、クラウド版とデスクトップ版があります。クラウド版は、月額制で、スマホやタブレットからもアクセスでき、テレワークに向いています。
一方、デスクトップ版は、一度インストールしてしまえば月額料金はかかりません。クラウド版とデスクトップ版の大きな違いは、インストールが必要なのか、不要なのか、というところにあります。
美容室経営者になぜ経理ソフトが必要なのか?
「本業が忙しくて経理に時間をかけられない」「簿記の知識がないから難しい経理処理は無理」というのは、美容室経営者に共通する悩みです。
「腕には自信があるけど、数字となるとちょっと……」という美容室オーナーさんは少なくありません。
1年が終わり、翌年の1月に入って「自分でやろうと思ったんだけど、忙しくて全然できなかった」といって大量の領収書を持ってくるお客様がいることも、税理士事務所あるあるの一つです。
でも、個人事業主として、または法人の代表として開業したのであれば、計数感覚を磨いて経営にも強くなっていかなければなりません。
そこで活躍するのが経理ソフトなのです。経理ソフトは手書きの帳簿と違い、集計や比較が簡単に行えます。
例えば、前月比較、四半期比較、半年比較、前期比較、推移比較、損益計算、残高照会、キャッシュフロー計算など、様々な角度から経営を分析することができます。
しかも、一度設定をしてしまえば、自動で通帳の内容を取り込んだり、同じ内容の取引は定型仕訳で簡単に入力ができるので、経理初心者でも簡単に使用することができます。
わからないことがあれば、サポートセンターに電話をして教えてもらうこともできます。このように経理ソフトは、日々忙しく毎日を過ごしている美容室経営者の助けとなる、頼もしいツールだといえるでしょう。
美容室経営者が経理ソフトを導入するとどのようなメリットがあるのか
?
経理ソフトを導入すると次のようなメリットがあります。
①経理担当者の負担が減る
経理ソフトを利用すれば、日々の取引内容を入力するだけで、簡単に記帳できます。また、1つの仕分けを入力することで複数の帳簿に反映されるので、様々な帳簿の作成や手書き作業を減らすこともできます。
美容室で使用する仕訳は、ある程度定型です。同じ取引を仕分け登録してしまえば、自動取り込み、自動仕分けで、入力の手間も大幅に削減できます。
領収書の写真を撮影するだけで仕分けされる便利な機能を持った経理ソフトもあります。
②集計ミスを防げる
エクセルなどの表計算を用いて集計をしていると、せっかく計算式を組んでいたのに数値がズレてしまったという経験をした方は多いのではないでしょうか。
エクセルで集計して確定申告書を作成する凄腕の経営者もいますが、会計ソフトは、自動集計で様々な帳票を作成してくれます。
③確定申告書を自動作成できる
画面の案内に従って入力していくだけで、確定申告書などの税務署提出書類が自動で作成されます。
青色申告は白色申告と比較してメリットが多いのですが、経理ソフトの導入でかんたんに申告書を作成し、e-Taxで送信することもでき、青色申告特別控除を最大65万円受けることができます。
④経営状態をいつでも確認できる
日々の取引をその都度登録していれば、経営状態のレポートが自動で集計されます。
いつでも確認したいタイミングで、事業に儲けが出ているのかをリアルタイムに集計できます。
経営状況を即座に把握し、早めの判断を下すこともできるようになります。
経理ソフトを使うには専門知識が必要か?
経理ソフトは、会計や簿記の初心者にこそ、ぜひ使ってほしいツールです。
専門知識がなくても、もちろん使えます。経理ソフトは、メーカーによってボタンの配置や画面の構成、コマンドが異なりますので、簿記の知識がある人でも、会計事務所に勤めている人でも、最初はあれこれ触ってみて覚えていきます。
簿記の知識があるから使いこなせると言う訳ではありませんから、経理初心者の人と簿記の知識のある人のスタートラインは一緒なのです。
最近の経理ソフトは、簿記の知識がない人でもさまざまな書類を自動で作成できるように、自動作成機能が充実しています。
また、操作についてわからないことがあれば、利用者が多い経理ソフトはサポートも充実していますので、サポートセンターに気軽に問合せをして、入力方法を聞くことができます。
ネットを検索すれば、操作マニュアルや口コミ情報も入手しやすいでしょう。また、大手の経理ソフトであれば、税の相談先となる税理士も同じソフトを使用しているケースがありますから、操作方法のアドバイスを受けやすくなります。
経理ソフトの多くは、無料体験版や初年度無料キャンペーンを実施しています。実際に使用してみて、操作性を確かめてから購入を検討してみてはいかがでしょうか。
美容室経営者はどうやって経理ソフトを選べばよいか①使いやすさ編
経理ソフトは、①会計事務所が使うプロ用ソフト、②経理初心者でも比較的簡単に導入しやすい経理ソフトの2種類に分かれます。
①は、会計事務所が導入するソフトで、複数の会社の会計を一元管理していくソフトですから、一般ユーザーの目に触れることはあまりないでしょう。
ただし、美容室経営を開始すると同時に税理士と顧問契約を結ぶような場合には、税理士が使用している会計ソフトと連携したソフトの導入が必要になるケースがありますから、顧問税理士に相談して導入することをお勧めします。
②は、経営の形態によって、選び方が変わります。選ぶポイントは、「用途・タイプ・OS・価格」にあります。
「用途」は、個人事業主向けのソフトを必要としているのか、それとも、法人向けのソフトを必要としているのか、です。
「タイプ」は、いつでもどこでもアクセスできアップデートも自動のクラウド版なのか、セキュリティ重視のインストール版なのかです。
「OS」は、Windows用に使用するのか、Mac用に使用するのかです。Mac対応のインストール版会計ソフトは少ないため、Macを使っている方は注意が必要です。
「価格」は0円(無料)からあります経理ソフトは、従来ではインストール版が主流でしたが、最近ではクラウド版を導入する事業主が増えてきました。
かといってインストール版への不満が多いわけではなく、どちらにも一長一短があります。どの経理ソフトを選択するかは、最終的にユーザーの好みに委ねられるというところです。
美容室経営者はどうやって経理ソフトを選べばよいか ②コスト編
経理ソフトには、無料版と有料版があります。無料版は、機能が制限されていたり、期間が限られている場合があります。
また有料版の無料お試しは、「まず、どんな機能があるのか触って確かめてみたい」というように、本格稼働の前のプレ使用をイメージすると分かりやすいです。
無料版には、代表的なところで「弥生の白色申告」「フリーウェイ経理Lite」があります。「弥生の白色申告」は完全無料でずっと使えるところが魅力ですが、青色申告のメリットを享受したいと考えるのならば短期間の使用にとどまるでしょう。
「フリーウェイ経理Lite」も永年完全無料のソフトで人気ですが、一般に無料の経理ソフトは基本的にサポートがあまりないので、自分でマニュアル等を確認しながら操作していくことになります。
有料版は、1回だけ支払うインストール版なのか、月額払いのクラウド版なのかにより、ランニングコストが変わります。
例えば、インストール版は最初に購入費用としてまとまった金額が必要となりますが、クラウド版はほとんどのソフトが月額払いです。
「毎月支払うクラウド版よりも、一度買ってしまえば何年も使えるインストール版の方がお得なのでは?」という質問を受けますが、インストール版は、バージョンアップや法令改正への対応は自分で行わなければなりません。
経理ソフトの購入の際には、自分にとってどのタイプが最適か、使用頻度や期間なども含め比較をしてみてください。
同じカテゴリー内の経理ソフトを概観すると、機能やサポートが充実しているものは値段が高いので、最初は予算に応じてスタートし、事業の拡大とともに経理ソフトもバージョンアップしていくのも1つの方法です。
美容室経営者が経理ソフトを使うときの注意点
好みの経理ソフトを購入し入力の準備が整ったら、いよいよ経理処理のスタートです。経理処理を短い時間で要領よく終わらせるために、次の準備をしてから経理処理を進めましょう。
1)売上の計上漏れがないか確認をする
2)店舗で受け取った請求書や領収書を整理し、同じ取引ごとにまとめておく
3)現金残高の確認、通帳への入出金を確認しておく
4)経理ソフトの基本設定の登録
経理ソフトは、最初の設定が重要です。日々の入力が最終的に確定申告の作成へ連動しますので、一番初めにソフトを開いてから基本設定画面に移行していきますから、面倒でも丁寧に入力していきましょう。
5)仕訳の入力
試しに、領収書を1枚入力してみましょう。間違えてしまっても入力の削除や修正ができますので、「習うより慣れろ」といわれるように、仕分け登録してみたり、タブを開いてみたりと初めての経理ソフトを楽しんでみてください。
6)記帳を貯めない
1か月まとめて一気に入力をする、とお考えの方がいらっしゃるかもしれません。慣れてきたら自由にペースを決めてもらって構いません。ただし、最初の1年は、こまめに入力しておくことをお勧めします。
美容室経営が忙しいと、その日その日の残高をきっちり合わせようと思っていた最初の意気込みが薄れていってしまうかもしれません。
お小遣いなど「財布に入れておいたお金があっという間になくなったけど、何に使ったっけ?」というタイプの方は要注意です。
自分の経営が赤字なのか黒字なのか、現在どれぐらいの経費を使っているのか、損益分岐点はいくらで売り上げ目標はどのくらいに設定しなければいけないのか等の判断は、日々の経理処理に基づき決定します。忘れる前に、入力してしまいましょう。
また、毎日の日課として経理ソフトに触れることで、あっという間に操作に慣れていきます。右も左もわからず入社した会計事務所のスタッフも、最初は経理ソフトの開き方、領収書の読み方、仕分け登録を経理初心者の皆さんと同じように覚えていきます。
そしてあっという間に、前から勤めていたスタッフと同じスピードで使いこなしていきますから、経理初心者の皆さんも心配には及びません。とにかく、「こまめに処理」がポイントです。
美容室経営者にお勧めする経理ソフト①・・・弥生
どの経理ソフトにもメリット・デメリットがあります。画面の構成や機能など好みによりますが、経理ソフトランキングを参考に、おすすめ経理ソフトを紹介いたします。
MM総研が個人事業主(2万980人)を対象にアンケート調査を実施し、2020年4月末時点のクラウド会計ソフトの利用状況の調査結果を発表しました。
<会計ソフトの利用率>
会計ソフトを利用している 33.9%・・・①
会計ソフトを利用していない 57.1%
<①のうち、会計ソフトの利用形態>
クラウド会計ソフト 21.3%・・・②
PCインストール型会計ソフト 67.7%
<②のうち、使用している会計ソフトの種類>
弥生 56.7%
freee 21.1%
マネーフォワード16.8%
参考:株式会社MM総研 「クラウド会計ソフトの利用状況調査(2020年4月末)」
https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=415
弥生は、クラウド版(弥生オンライン)とインストール版(弥生21シリーズ)の両方を展開しています。
弥生オンラインは、個人事業主なのか法人なのか、個人事業主でも白色申告者か青色申告者かによって使用するソフトが異なります。

美容室経営者にお勧めする経理ソフト①・・・弥生
一方、弥生21シリーズは、ヨドバシカメラなどの家電量販店のPCソフトコーナーなどで見かけることがある、PCにインストールして使用する経理ソフトです。

美容室経営者にお勧めする経理ソフト①・・・弥生個人事業主向け
美容室経営者にお勧めする経理ソフト②・・・freee
株式会社MM総研の「クラウド会計ソフトの利用状況調査(2020年4月末)」で2位になった経理ソフトです。freeeはクラウド型の経理ソフトなので、インストールをするパッケージ版はありません。

美容室経営者にお勧めする経理ソフト②・・・freee
freeeは請求書作成機能を無料で利用できるところが魅力の1つです。また、freeeの強みはスマホアプリの機能が充実していることです。
「○」か「×」の質問に答えるだけで確定申告書を作成することができます。経理初心者にはとても便利な機能です。
freeeは、全てのプランでメール・チャットサポートを受けることができますが、電話サポートが必要な場合は年間3万9800円のプレミアムプランを選択しなければなりません。
女性税理士が解説!美容室経営にお勧めの経理ソフトとはまとめ
経理ソフトはどんなことができるのか?初心者でも使えるのか?人気があるソフトは何があるのか?いくらぐらいするのか?という経理ソフトに対していただくご質問に、答えてまいりました。
経理ソフトを導入していらっしゃらない経営者の方々は、独自の帳簿やエクセルなどの集計表を用いて日々記帳をし、確定申告書の提出期間に、お住いの市区町村の税務相談会などで申告書を作成し仕上げて提出しています。
帳簿を付けて自分で集計するのか、経理ソフトに領収書を写真で撮ったり入力したりして集計するのかの違いです。
どのようなスタイルでも、ご自分の経営状況を把握できていれば、経営者として満点だと思います。そして、納税者自らが税務署へ申告を行うことにより税額を確定させ、この確定した税額を納付する申告納税制度を掲げるわが国においては、納税者=経営者の責任は重く、経理についても少しずつで結構ですので勉強していただきたいと思うのです。