事業を成功させるために、経営者としてやるべきことは、とても多くあります。なかでも売上を向上させることは、最も重要な施策の一つと言えます。
売上をあげて利益を確保しなければ、家賃や給料などの費用を賄えなくなるからです。それでは、売上を伸ばすためには、どのようにすればよいのでしょうか。それには、売上がどのように構成されているのかを考えてみるとわかります。
エステサロンにとってのリピート率とは?
エステサロンの売上は、お客様の人数と施術料との掛け算(客数×客単価)で表すことができます。つまり、売上を伸ばすには、客数を増やしたり、客単価を上げたりすればよいことがわかります。
さらに、客数は、既存顧客と新規顧客とに分解することができます。マーケティング理論に、新規顧客を獲得するためには、既存顧客を維持するコストの5倍のコストがかかるという、「1:5の法則」があります。
エステサロンのことを全く知らない新しいお客様を集客するためには、広告などの費用や認知いただくまでに時間がかかります。それに対し、既存のお客様に、サロンのファンとなっていただいて、再度の来店を促す方が、効率よく集客できるわけです。
新規顧客を増やして売上を伸ばすことも大切ですが、既存顧客に再来店(リピート)いただいた方が、売上向上の近道となるのです。
エステサロンに集客したお客様のうち、再度来店いただいたお客様が占める割合(新規のお客様が再来店する割合)をリピート率で表します。
リピート率(%)=再来店したお客様数(人)÷累計新規顧客数(人)×100
このリピート率が高ければ高いほど、2回以上来店してくれたお客様が多い(1回きりのお客様が少ない)ということになります。また、再来店いただくお客様(リピーター)の割合を示したリピーター率も、お客様の来店状況を把握するのに有効です。
ただし、リピーター率が高過ぎる状態では、売上をリピーターに頼りすぎているということになるため、注意が必要です。
エステサロンにとってリピート率はとても重要!!
エステサロンの顧客は、大きく新規顧客と既存顧客の二つに分けることができます。新規顧客は、これまでサロンにご来店いただいたことのないお客様であり、一方の既存顧客は、サロンにご来店いただいたことのあるお客様ということになります。
そして、既存顧客のうち、再度ご来店いただくようになったお客様は、リピーターとなります。
エステサロンにとってのリピーターは、とても重要な存在です。体に触れて施術を行うエステサロンは、商品販売を主とする小売店の場合よりも、お客様との信頼関係が特に必要となってきます。信頼関係はそう簡単には構築されるものではありませんが、一度関係ができると、そのお客様はエステサロンのリピーターとなり、他のサロンには目を向けなくなるに違いありません。
また、リピーターが増えれば、「1:5の法則」にあるように、広告費などのコストを抑えることができるため、サロンの収益率が高くなり、経営の安定化につながっていきます。
サロンのお客様は、数多くあるエステサロンの中から当店に興味を示し、貴重な時間をさいてご来店いただいた方々です。このようなお客様が「また来たい」と思っていただくように、しっかりともてなしてリピーターを増やし、リピート率を上げていくことがとても重要なのです。
リピート率が上がることによるエステサロンへの効果
リピート率は、これまで来店いただいた全てのお客様のうち、どのくらいの人数が再来店してくれたかを表すものです。これは、お客様がお店の提供するサービスに満足しているかを明確に表す指標であり、エステサロンにとっても重要な指標となります。
リピート率で、サロンの売上を構成する顧客の質が分かる
再来店いただいたお客様の割合が明確になることで、お客様の満足度合いを図ることができます。リピート率が高ければ、サロンに対する満足度も高いということになります。
また、満足度の高いお客様は、エステサロンで追加サービスを求めることも多く、客単価も向上し、優良顧客に位置付けることができます。
リピート率が上がると、収益性が良くなる
リピート率が高ければ、新規顧客と比べて集客にコストのかからないリピーターが多いということになり、経費が抑制されていることがわかります。
また、そのリピーターの中から優良顧客が増えてくることで、客単価が向上し、収益性がさらに向上していきます。
項目ごとのリピート率を算出することで、具体的な施策を打ち出せる
項目ごと(メニュー別、スタッフ別、年齢層別など)にリピート率を算出することで、具体的な施策を検討することが容易になります。
例えば、メニュー別リピート率を算出した時に、ヘッドスパのリピート率だけが低い場合には、美容液が良くない、料金が高いなどの理由が考えられ、早めの対策を練ることができます。
リピート率の指標を複数使用することで、さまざまな角度から分析することも可能になります。例えば、メニューごとにスタッフのリピート率を見ることで、スタッフごとの強みを把握することができます。リピート率で、エステサロンの強みをさらに伸ばしていくことが可能になるのです。
エステサロンが集客できずリピート率が上がらないのはどうして?
リピート率を把握したあとは、リピート率が低い原因を特定し改善していくことが必要です。エステサロンのリピート率が低い理由は、サロンによっても異なりますが、代表的なものを解説していきます。
顧客ターゲットのミスマッチ
ターゲット設定があいまいであったために、サロンが集客したい客層と来店したお客様とにズレが生じていると、リピート率は低下します。例えば、30~40代の女性をターゲットにしているのに、内装やスタッフが若者向きの装いであると、お客様は離れていってしまいます。顧客ターゲットは、明確にしておく必要があります。
お試し価格を安くしすぎている
新しいサービスの料金を、お試し価格として割引することがあります。ただし、割引率には注意が必要です。最初だけ安いというのは、裏を返せば次回から高くなるということになります。安さだけを理由に来店したお客様がリピーターになる可能性は低くなり、リピート率は低下してしまうのです。お試し価格は安くし過ぎないようにしましょう。
フォローがない
エステサロンに限らず、顧客の離反理由の一つに、お店の存在を忘れてしまったというものがあります。来店後のフォローが不足していると、お客様はサロンの存在を忘れてしまい、リピートいただく可能性が下がってしまいます。サロンの存在を意識していただくためには、来店時の割引券の配布や定期的なダイレクトメールの送付などが有効です。
利便性がよくない
予約方法などの利便性がよくないと、リピート率は低くなります。リピート率が高いエステサロンは、予約が取りやすいといわれています。また、エステサロン利用者の多くがネット予約を活用しており、予約だけでなくキャンセルも気軽にできることが好まれているようです。リピート率が低い状態が続いているのであれば、お客様にとっての利便性を意識して、予約方法などを改善していく必要があります。
特別感が薄い
リピート率が低くなる原因の一つに、エステサロンに特別感が薄い、というものがあります。つまり、お客様は、他のエステサロンと比べて特徴が感じられないと、他のエステサロンも試してみようと思ってしまうのです。差別化を図ることが難しいメニューや価格ではなく、お客様の悩みを親身になって聞き取り、解決策を提案することができれば、感動を与えることになり、サロンに対する特別感が醸成されていきます。
自身のエステサロンのお客様の特徴を把握してリピート率を上げる
エステサロンのリピート率を上げるためには、サロンと相性の良いお客様を集客する必要があります。ここで有効となるのは、STP分析というマーケティング手法です。
STP分析とは、セグメンテーション(市場細分化・お客様の特徴の把握)、ターゲティング(狙う市場の決定、集客したいお客様層の決定)、ポジショニング(自社の立ち位置の明確化・お店の特徴の把握)の3段階の分析を行い、サロンが有利に戦える立ち位置を探すためのフレームワークです。
セグメンテーションでは、エステサロンの市場を細分化して、セグメントごとのニーズを把握していきます。さまざまな指標を用いて、できるだけ細かく分割すると、サロンの提供するサービスを必要としているお客様が、どのような層にいるのかを明確にすることができます。効果的なセグメンテーションを行うための指標として、4つの指標を紹介します。
人口動態変数(デモグラフィック変数)
性別・年齢・職業・家族構成・学歴など、人に関する基本情報を基にしたセグメント指標です。統計調査などを参考に考えます。
地理的変数(ジオグラフィック変数)
国・都道府県・地域・気候・文化・宗教など、地理的要因に関する情報を基にしたセグメント指標です。地図のほか国の調査結果などを参考に考えます。
心理的変数(サイコグラフィック変数)
価値観・社会的地位・性格(パーソナリティ)・ライフスタイル・購入動機など、個人の心理に関する情報を基にしたセグメント指標です。
行動変数(ビヘイビアル)
購買頻度・購買メリット・使用頻度・使用用途など、個人の行動に関する情報を基にしたセグメント指標です。消費者の行動追跡データなどを参考に考えます。
また、セグメンテーションを行う際には、「4R」を意識すると、より効果的なセグメントを探しやすくなります。
Rank(優先順位)
優劣をつけられないセグメンテーションでは効果が期待できないため、細分化した市場がランキング化できるものになっているかを意識します。
Realistic(有効規模)
十分な売上と利益を確保できる規模の市場であるかを意識します。
Reach(到達可能性)
お客様に商品やサービスを届けられる環境が整っているかを意識します。
Response(測定可能性)
後のマーケティング戦略を立てやすくするため、お客様の反応を測定・分析できるのかを意識します。
集客したいお客様層を決めてリピート率を上げる
セグメンテーションで市場を細分化したら、次にターゲティングを行います。ターゲティングでは、細分化した市場の中からどの市場を狙うのかを定め、エステサロンが集客したいお客様層を決めていきます。
ターゲティングには、大きく3つの手法「無差別型マーケティング」「差別型マーケティング」「集中型マーケティング」があります。エステサロンとしては、ターゲットを絞り込む集中型マーケティングが適しています。
ターゲットは言い換えると“サロンのお客様として対象となる人”となります。つまり、ターゲットを絞り込むということは“対象とならない人を除外する”ということになります。
これにより、サロンの方針と合わない人や、リピートする気が全くない人まで集客してしまうことを避けることができるのです。
また、サロンのコンセプトや特徴が“対象となる人”に対して明確に届くことで、集客しやすくなるだけでなく、そのようなお客様をより多く集客することでリピート率も上がっていきます。
ターゲットを選定する際には、セグメンテーションで細分化したグループから、以下のポイントを意識しながら、いくつか選んでいきます。
サロンの強み
サロンの強みを活かせるセグメントなのかを意識します。
市場規模と将来性
十分な収益性を確保できる市場なのか、将来性もある市場なのかを意識します。
競合の戦略
競合を分析し、競合と異なるアプローチが可能なのかを意識します。
特に重要なことは、その市場のお客様のニーズがサロンの強みと合致しているか、ということです。それぞれのセグメントのニーズを洗い出し、サロンのコンセプトや特徴に合うお客様を選定していきましょう。
お店の特徴を把握してリピート率を上げる
ターゲットを絞り込んだら、次はポジショニングを行います。ポジショニングとは、競合が多く存在するエステサロン市場のなかで、サロンの差別化を図り、他社との違いをアピールする方法を考えることです。ポジショニングを行う際には、「機能」「サービス」「イメージ」などの側面から、差別化ポイントを探っていきます。
ここで重要となるのは、お客様目線で考えることです。
機能
エステサロンに通う主な目的である「痩せる」という効果以外に、「健康でいたい」「若々しくいたい」などのニーズに応えた付加価値を加えることができているかを意識します。
サービス
エステサロンスタッフの接客は、お客様の要望に応えた接客ができているのか、また、お客様の声を反映したメニューになっているのかを意識します。
イメージ
お客様の心に残る施術だったのか、お客様の心に残るサロンだったのかなど、お客様に特別感を与えることができているかを意識します。
どうすればターゲットとするお客様に喜んでいただけるのかを考え、サロンの特徴を活かしながらお客様に寄り添ったポジションを確立することが、ポジショニングを成功させるポイントとなります。そして、これらがお客様のリピートにつながり、リピート率を向上させることになるのです。
リピート顧客も新規顧客も重要
エステサロンにおいては、リピート率を上げるために既存顧客を維持することが重要です。既存顧客は、的確なアプローチを行うことで、お客様が優良顧客(リピート顧客)となりやすいからです。
また、マーケティング理論に「パレートの法則(80:20の法則)」というものがあります。売上の8割は全顧客の2割が生み出していると言われているもので、2割の優良顧客(リピート顧客)に絞ったサービスを行った方が、効率が良いということになり、この理論からも既存顧客が重要であることがわかります。
しかし、創業期のサロンにはそれほど多くの顧客はいません。また、長く営業していると環境の変化からリピート顧客が減るときもあるでしょう。そのような時には、新規顧客獲得に取り組まなければなりません。
新規顧客の獲得には「1:5の法則」にあるように、既存顧客の場合と比べてコストがかかりますが、新規顧客を満足させることができれば、そのお客様はリピート顧客となる可能性が高まります。
新規顧客の獲得は、新しいリピート顧客を生み出し、より多くの利益を得るために欠かせない戦略であり、エステサロンのリピート率を向上させる重要な要素でもあるのです。
リピート顧客、新規顧客とも、エステサロンにとってはどちらも大切な存在です。しかし、それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらか一方を大事にしようとすれば、もう一方から不満が出ることもあります。リピート顧客か、新規顧客か、どちらを重視した戦略をとるのかを迷った時には、以下の3つの判断基準をもとに方針を決定しましょう。
サロン創業期・成長期
創業期にはそもそも顧客が少ないため、新規顧客を獲得していかなければなりません。また、リピート顧客の数が十分なものになるまでは、新規顧客を集客していく必要があります。
市場規模
サロンの置かれている市場が、環境の変化などで縮小してしまった時などは、新規顧客の集客は必要となります。しかし、市場が大きい場合は、十分な数のリピート顧客がいるのであれば、新規顧客の集客は、コストをかけてまで行う必要はないでしょう。
サロンの方針
サロンの経営が順調に進み、市場シェアの拡大や異なる市場への進出を検討する場合は、新規顧客の集客が必要となります。一方で、規模の拡大は目指さず、現状の規模で経営を続けていくのであれば、リピート顧客を優先していくことが効果的です。
エステサロンで使える集客方法
エステサロンにとっての集客とは、お客様を集めることだけではありません。お客様にご来店いただいて、リピーターとなってもらい、サロンの魅力を十分に伝えることができてはじめて、集客が成功したことになるのです。
近年は、インターネットなどを利用して簡単に情報を入手できるため、興味があったとしてもすぐには行動せず、集めた情報をじっくりと比較検討してから購買行動に移ることが多いようです。
エステサロンとしては、的確な情報発信を行い、口コミや評判などを通じて、あらかじめサロンを知ってもらってからご来店いただく、ということが効果的な集客方法といえます。短期的発想で集客を行うのではなく、長いスパンで集客を行うほうがよいでしょう。
集客方法にはたくさんの方法がありますが、闇雲に集客を行うのではなく、ターゲットを絞った集客を行ったり、ターゲットごとに集客方法を変えたりする必要があります。
エステサロンの場合は、ターゲットが若年層であれば、SNSのなかでもインスタグラムで拡散される方が効果的です。その一方で、中高年層がターゲットとなれば、SNSよりも割引クーポン付きのチラシや雑誌などの方が効果的となります。
また、リピート率をあげるため、お客様に再度の来店を促すサービスを用意しておくことも、効果的な集客方法であるといえます。
再来店を促す方法としては、
・カウンセリングを充実させる。
・会計時に次回の予約を促す
・ご来店後、時間を空けずにお礼のダイレクトメールを送付する
・スタンプカードを発行する
・次回来店時に使用できる割引クーポンを配布する
・再来店を促すためのメールを送信する
などがあげられます。お客様によってアプローチ方法を変える必要があります。お客様に合った方法で集客を試みていきましょう。
エステサロンで使えるマーケティング手法
マーケティング戦略を考える際には、フレームワークを活用します。フレームワークとは、直訳の通り「枠組み」のことで、ビジネスモデルやマーケティング戦略を検討する際に、あらかじめ用意した枠組み沿って考えていくためのツールです。エステサロンにおいても、課題や目的を明確にしていくのにとても効果的です。ここでは、エステサロンに有効なマーケティング手法を紹介します。
・ファイブフォース分析
ファイブフォース分析は、エステサロン業界の構造を分析するものです。「売り手の脅威」「買い手の脅威」「既存競合の脅威」「新規参入競合の脅威」「代替の脅威」という5つのフォース(脅威)の観点で分析します。事業を進めていくなかで、良いことばかりが続くわけではありません。サロンにとってのマイナス要因を、思いつく限り書き出しておくことも必要なのです。
・3C分析
3C分析とは、「Customer(顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの観点でサロンを取りまく環境を分析します。外部要因である顧客と競合、そして内部要因であるサロンを比較することで、サロンの強みと弱みを明確にすることができます。
・SWOT分析ファイブフォース分析
ファイブフォース分析は、エステサロン業界の構造を分析するものです。「売り手の脅威」「買い手の脅威」「既存競合の脅威」「新規参入競合の脅威」「代替の脅威」という5つのフォース(脅威)の観点で分析します。事業を進めていくなかで、良いことばかりが続くわけではありません。サロンにとってのマイナス要因を、思いつく限り書き出しておくことも必要なのです。
・3C分析
3C分析とは、「Customer(顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの観点でサロンを取りまく環境を分析します。外部要因である顧客と競合、そして内部要因であるサロンを比較することで、サロンの強みと弱みを明確にすることができます。
・SWOT分析
SWOT分析とは、サロンの現状を分析するためのフレームワークです。「Strength(サロンの強み)」「Weaknesses(サロンの弱み)」「Opportunities(機会となる外部要因)」「Threats(脅威となる外部要因)」の4つの観点から分析を行います。SWOT分析を行うことにより、サロンを取り巻く環境を把握し、サロンの課題を明確にすることができます。
・STP分析
前章で紹介したフレームワークです。「Segmentation(市場の細分化)」「Targeting(狙う市場の決定)」「Positioning(自社の立ち位置の明確化)」の観点から分析を行います。この分析により、どの顧客層を狙い、どの立ち位置で進めていくのかを決めていくことになります。
・4P分析
4P分析とは、マーケティングミックスともいわれ、お客様に購買行動(来店行動)を起こしていただくために必要な「Product(商品・サービスメニュー)」「Price(メニュー価格)」「Place(流通・立地)」「Promotion(販売促進)」の4つの観点から分析を行いものです。4P分析を行う際には、STP分析との整合性を意識しながら整理する必要があります。
フレームワークを活用する際には、1種類だけで行うのではなく、複数のフレームワークを選定して使用することが効果的です。
複数のフレームワークを使用することで、多面的に分析することができるため、各フレームワークの精度を高める効果があるからです。
しかし、全てのフレームワークを活用するのではなく、サロンの置かれた状況を照らし合わせながら、フレームワークを絞ったうえで実施するようにしましょう。