ネイルサロン経営の中で必要な資金は、運転資金と設備資金です。ネイルサロンを維持、継続、拡大するにはこれらの資金は欠かせません。
今回は、資金調達の選択肢の1つ補助金・助成金まとめました。
ネイルサロンオーナーが知るべき助成金とは
ネイルサロンは環境変化にさらされ、経営戦略の遂行にはリスクも伴います。これを乗り越え、リスクを最小とする手段の1つに外部資金の活用があります。
外部資金を得る代表的な方法は融資、補助金、助成金です。この中で助成金は、事業計画の実現性を求められる融資や補助金と異なり、社会保険に加入していれば厳しい審査がなく、また要件を満たしてさえいれば原則受給ができます。
さらに、返済や経費等の報告義務もありません。
助成金は小規模事業の経営者にとって使い勝手の良い制度です。ネイルサロンオーナーが知るべき助成金を紹介します。「創業助成金」は、ネイルサロンの創業・開業時の資金を支援します。
「トライアル雇用助成金」
ネイルサロンの新規人材確保のために未経験者や1年以上離職していた人に試用期間を設けて雇用すること支援します。
「キャリアアップ助成金」
ネイルサロンの従業員の定着を図るために非正規社員を正社員として雇用することを支援します。
「人材開発支援助成金」
ネイルサロンのサービス向上のために従業員の成長・育成を図る研修等の活動を支援します。
「人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)」
ネイルサロンの従業員の定着を図るための健康つくり制度等の雇用管理制度の導入を支援します。
「人材確保等助成金(人事評価改善等助成コース)」
ネイルサロンの生産性の向上を図るための人事評価制度や賃金制度の整備を支援します。
尚、助成金を受給する場合の共通の要件は以下の4つです。
①雇用保険、社会保険に加入している事、②1名以上雇用している事、③労務違反がない事、④半年は会社都合の解雇をしていない事です。
助成金を賢く使い事業運営に活用してください。
ネイルサロンの創業に使える補助金「創業助成金」
創業は不確定要素が大きく、事業の成功確率は高いとは言えずリスクが高いといえます。
ネイルサロンをこれから創業する方或いは創業間もない方の事業の立ち上げリスクを低減するために「創業助成金」を活用してみてはいかがでしょうか。
東京都では「創業助成金」を4月と10月に募集しています。対象は、下記です。
- 都内の創業予定者。
- 創業後5年未満の中小企業者。
- TOKYO創業ステーションの事業計画書策定支援終了者、東京都制度融資(創業)利用者等の18種類の創業支援事業のいずれかを利用し申請要件確認資料が提出できる中小企業者。
上記の3つの条件を満たす必要があります。
ネイルサロンを創業されるに方は、TOKYO創業ステーションが実施する「TOKYO起業塾」に参加され事業計画書策定支援の終了証明を取ることをお勧めします。
助成金額は、100万円~上限300万円で、助成率は、2/3以内です。
450万円の資金が必要な場合300万円まで助成されます。
助成対象は幅広く、店舗等の賃借料、ホームページ製作費用等の広告費、1万円以上50万円以下の机や椅子等の器具備品購入費、ネイルサロンの店名の商標権等の産業財産権の出願費用、申請時の行政書士等の専門家指導費、従業員の人件費です。
助成期間は、交付決定から1年以上、最長2年です。この期間に費用の支払いを完了した後に領収書等を添付して申請すると助成金が支払われます。
助成金を受けるには、審査官が事業が成功することを確信できるように記述しなくてはなりません。
第三者に分かりやすいネイルサロンの事業計画書を作るために、先に紹介した「TOKYO起業塾」へ参加や中小企業診断士等の専門家に相談されることをお勧めします。
これから創業される方、創業間もない方は、立上げリスクを軽減するために「創業助成金」をご活用ください。
ネイルサロンのスタッフの雇用に使える助成金①トライアル雇用助成金」
ネイルサロンで新規の人材を募集する時に、履歴書や面接だけでは採用して良いかどうか判断をできない場合に、この助成金を使って応募者の適性や業務遂行能力を実際に見極めるために試用期間を設け、実務の中で適性を判断し本採用をすることができます。
中小企業では多くの人を抱えることはできません。事業の成否を決めるのは人材次第といっても言い過ぎではありません。この助成金を使うことで、申請手続や対象者の教育育成に時間とコストがかかりますが、短期間で退職するようなミスマッチを減らし、全体としての採用コストを減らすことができます。
「一般トライアルコース」を紹介します。受給するには以下の要件を満たさなくてはなりません。
①対象者が要件を満たし、本人がトライアル雇用を希望した場合に対象者となります。具体的には、出産を理由に離職した者や離職している期間が1年を超えている者、母子家庭の母等様々です。
②ハローワーク等に出された求人に対して、ハローワーク等の紹介により雇い入れる。
③原則3か月のトライアル雇用をする。
④1週間の所定労働日数が原則として通常の労働者と同程度であることです。支給対象期間は、最長3か月です。
支給額は、対象者1人につき月額4万円です。母子家庭の場合は、5万円です。トライアル雇用を希望する方は、強い就職希望を持っています。適性を見極め、安定した人材を確保するために「トライアル雇用助成金」ご活用ください。
ネイルサロンのスタッフの雇用に使える助成金②「キャリアアップ助成金」
小規模なネイルサロンでは、すべての従業員を正社員として無期雇用することは難しく、有期雇用の非正規社員としての採用が中心にならざる得ません。
事業の中核を担う非正規社員の定着を図り事業を安定化させるのに役立つのが「キャリアアップ助成金」です。
受給に必要な要件は、下記です。
- 雇用保険適用事業所である事、
- キャリアアップ管理者をおいている事、
- キャリアアップ計画を立案、提出し受給資格を受けている事などが必要です。助成対象は、7つです。
①非正規社員を正社員に転換する「正社員化コース」、
②賃金規定を増額改訂する「賃金規定等改訂コース」、
③4人以上の非正規社員に法定外の健康診断制度を定める「健康診断制度コース」、
④正社員と共通の職務の賃金規定を改定する「賃金規定等共通化コース」、
⑤正社員と共通する諸手当制度を新しく作成する「諸手当制度共通化コース」です、
⑥社会保険適用を拡大し基本給を上げる「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」、
⑦週あたりの所定労働時間を延ばして新しく社会保険を適用する「短時間労働者労働時間延長コース」。支給対象期間となるキャリアアップ計画は最大5年です。
支給額は、「正社員化コース」では、年間最大20人まで1人年間最大72万円の助成金を受けることができます。非正規社員を中心とした従業員を動機付けし、定着率の改善に「キャリアアップ助成金」をご活用ください。
ネイルサロンのスタッフの雇用に使える助成金③「人材開発支援助成金」
ネイルサロン事業を安定的に継続、発展させるためには良い人材が必要です。
しかし、良い人材は簡単には見つからず採用することが難しいのが現実です。
「人材開発支援助成金」は、ネイルサロンの従業員を新たに雇用して育成したり、既存の社員を教育訓練によって能力を伸ばしたりする時に助けになります。
これらを進めるのに必要な人件費、経費、設備費用の一部を助成するものです。受給に必要な要件は共通要件は下記です。
①雇用保険、社会保険に加入している、
②1名以上雇用している、
③労務違反がない、
④半年は会社都合の解雇をしていないです。
この助成金には、7つのコースがありますがネイルサロンに関係があると思われる「特定訓練コース」と「一般訓練コース」を紹介します。
これらのコースは、従業員に対して知識や技能を習得させることで経費と賃金の一部が助成されます。助成対象として7つの訓練が特定訓練としてあげられています。
雇用契約締結後5年未満で、35歳以下の労働者を対象とした「若年人材育成訓練」や現場訓練と現場以外での座学や実技を組み合わせた「認定実習職業訓練」などがネイルサロンの事業として対象となると想定されます。
支給額は、OFFJTの場合賃金助成として1人1時間最大960円、経費助成として最大60%、OJTの場合実施助成として最大840円が助成されます。
ただし、経費助成は上限があり100時間未満は15万円、200時間未満は30万円、200時間以上は50万円となっています。
良い人材がなかなか採用することができないネイルサロンでは、教育訓練を通して社内人材の能力を伸ばして良い人材に育てるために、「人材開発支援助成金」をご活用下さい。
ネイルサロンのスタッフの雇用に使える助成金④「人材確保等支援助成金
(雇用管理制度助成コース)」
ネイルサロンの経営者の課題はスタッフの離職率の低下と人材の確保です。「人材確保等支援助成金」では、次の6つのコースがありますが、「雇用管理制度助成コース」、と「人事評価改善等助成コース」がネイルサロンに関係が深いと思われます。
「雇用管理制度助成コース」を紹介します。雇用管理制度には、5つあります。
- 評価。処遇制度、
- 研修制度、
- 健康づくり制度、
- メンター制度、
- 短時間正社員制度(保育事業主のみ)の導入で、雇用管理の改善を行い離職率の低下に取り組んだ場合に助成するコースです。
制度助成はなく目標達成助成だけです。「雇用管理制度整備助成」の実施要件は、雇用管理制度整備計画を作成し認定を受け、さらにその計画に基づき、制度を整備し実際に実施することです。
「目標達成助成」の実施要件は、実施日の翌日から1年後の離職率が前1年に対しても目標値(10人未満で15%、20人未満で10%、・・)を以上に低下させ要件を満たすことが必要です。
計画期間終了後の1年で離職率を判定し支給申請を行います。支給額は、目標達成助成で57万円(生産性要件を満たした場合は72万円)です。ネイルサロンの経営課題である離職率の低下を「人材確保等支援助成金」で実現してください。
ネイルサロンのスタッフの雇用に使える助成金⑤「人材確保等助成金
(人事評価改善等助成コース)」
ネイルサロンはスタッフに顧客が付く形態で固定客化が進むことが多く、事業として収益を確保するには個々のスタッフへの動機付けが欠かせません。
人事評価制度と賃金制度を整備することで生産性の向上と賃金アップ及び離職率の低下を図るのが「人材確保等助成金(人事評価改善等助成コース)」です。
コースには2つの助成があります。
- 制度整備助成、
- 目標達成助成です。
「制度整備助成」の実施要件は、人事評価制度等整備計画を作成し認定を受け、さらにその計画に基づき、制度を整備し実際に実施することです。
「目標達成助成」の実施要件は、
- ①人事評価制度等の実施日の翌日から1年後に生産性要件を満たす「生産性向上要件」、
- ②実施日の前月の賃金と比較して1年後に賃金額が2%以上増加している「賃金増加要件」、
- ③実施日の翌日から1年後の離職率が前1年に対しても目標値(300人以下は維持)を以上に低下している「離職率低下要件」の3つの要件を満たすことが必要です。
受給申請は計画認定申請日から3年後となります。支給額は、制度設備助成では50万円、目標達成助成では80万円です。
ネイルサロンで、人事評価制度と賃金制度を明確にすることで、従業員に安心感を与え離職率の低下につながると同時に仕事への動機付けとなり生産性が向上します。
離職率の低下と生産性を向上のために「人材確保等助成金(人事評価改善等助成コース)」を活用してください。
ネイルサロンオーナーが知るべき補助金とは
先にリスクを最小とする手段の1つとして外部資金を得る代表的な方法に融資、補助金、助成金を紹介しました。ここでは、補助金について紹介します。
補助金とは、国の政策目標を実現するために政策目標に沿った事業を行う事業者に対して交付するお金です。助成金と同じく返済義務はありませんが自己負担が伴い、交付金は後払いです。
また、予算決定後1か月程度の公募期間に申し込まなくてはなりません。
申請時の審査以外に、交付決定後も計画書通り事業をしているか経費の内容の報告も必要です。ネイルサロンの経営者が、知るべき3つの補助金について紹介します。
「小規模事業者持続化補助金」
小規模なネイルサロンが働き方改革等の制度変更に対応してホームページの作成や店舗の改装等のための費用の一部を補助するものです。比較的交付を受けやすい補助金です。
「IT導入補助金」
ネイルサロンのバックオフィスの効率化やマーケティングのためにITツールを導入する際の費用の一部を補助するものです。上限額は450万円となっておりネイルサロンでの生産性やサービスレベルの向上を図り事業力を強化することができます。
「ものつくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものつくり補助金)」
新商品や新サービスの開発、生産プロセス開発など、生産性の向上につながる事業に対して交付される補助金です。上限額は1億円となっており経営者にとって新たな設備導入により生産性の向上等を検討される時には補助金は大きな助けになります。
ネイルサロンの販路開拓で使える補助金「小規模事業者持続化補助金」
ネイルサロンを創業して、良い商品やサービスを提供する準備が整っていても顧客に知られなければ顧客がその商品やサービスを利用することはなく収益は生まれません。
「小規模事業者持続化補助金」を活用することで費用を最小限に抑えて集客や販路拡大を行うことができます。
チラシの配布やWEBの製作、WEBでの集客、広告等の販路拡大のための経費が対象となります。小規模事業に限定される分、他の補助金より比較的申請がしやすく、使い勝手も良いのが特徴です。
資格要件は、従業員20人以下の小規模事業者や個人事業主です。
開業後であれば実績は問われません。
商業やサービス業を中心とした5人以下の小規模企業が優先されます。補助対象は、ネイルサロンの経営計画に基づいて行われるHPの製作費用、チラシの印刷費用、店舗改装等「地道な販路開拓等の取り組み」と従業員の作業動線の確保のための店舗改装等の「サービス提供等プロセスの改善」やPOSレジソフトウエアーを購入による売上管理業務の効率化等の「IT利活用」が対象となります。
事業期間は、概ね半年です。補助金額は、販路開拓にかかる経費の3分の2、最高50万円です。経費が60万円であれば3分の2の40万円が補助され残金は自己負担となります。
補助金の交付は補助事業が終了してからとなるので借り入れも含めて事前に必要資金の確保が必要です。比較的小規模なネイルサロンで、集客のお悩みをお持ちの経営者の方も多いかと思います。
「小規模事業者持続化補助金」を活用して集客しやすいホームページの製作やSNSとの連携等を検討してみてはいかがでしょうか?
ネイルサロンのITツール導入に使える補助金「サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)」
ネイルサロンで継続的に収益を上げるには、販路開拓による売上の確保と同時にネイルサロンのバックオフィスの効率化により経費を最小限に抑えることが必要です。
「IT導入補助金」を活用することで資金面でのハードルが下がり、生産性を向上させるために付加価値を生まないルーティン業務の改善や情報の一元化等の業務プロセスの効率化を進めるためのシステムの導入がしやすくなります。
資格要件は、中小企業及び小規模企業です。補助対象は、生産性向上に寄与するソフトウエア製品・クラウドサービス・それに付随するオプション・役務等の「ITツール」の導入費用です。
ネイルサロンでは顧客情報の共有化や連絡のツール等が対象となります。事業期間は、概ね半年です。補助金額は、30~450万円で、導入経費の2分の1です。
補助金の交付は補助事業が終了してからとなるので借り入れも含めて事前に必要資金の確保が必要です。収益力の向上をご検討されているネイルサロンの経営者の方も多いかと思います。
ITを活用して業務の効率化により無駄を省きバックオフィスの生産性を上げ、本来のサービスに集中することで収益力を上げることができます。「IT導入補助金」を活用してみてはいかがでしょうか?